「鎌倉殿の13人」義時を心服せしめた頼朝の威厳…第2回「佐殿の腹」振り返りと次回のポイント:3ページ目
駆けずり回る義時と、女のバトル?そして明かされる佐殿の腹
それでもどうにか比企屋敷へ辿り着いてみれば、比企夫妻からは「(頼朝が来ないことで)用意した料理などが無駄になった」「ちゃんと意思は確認したのか」など散々に責められ、八重姫からも八つ当たり。
「私は父に見つかれば自害する命がけの覚悟でここへやって来たのだから、お前も嘘をつくなら命がけでつきなさい!」
等々、とかく面倒ごとばかり押しつけられた挙句に報われることも少なく、ボロボロになって北条屋敷まで帰って来れば、時政がカンカンです。
せっかく新妻を迎えたと思ったら、家族が誰もいなかったことで激怒しており、政子がどこへ行ったかと聞けば
時政「土肥の次郎の(ところ)……」義時「行って来まーす!」
この辺りの呼吸が三谷脚本らしいコメディ調。遠路武蔵国から帰って来たばかりと言うのに、今度は伊豆から湯河原へ。
もう命を狙われている訳でもないので、別に放っておけばよかろうに、この義時は実に忙しく走り回ります。
で、夜通し走ったのか湯河原へ行ってみれば、いるのは頼朝だけで政子はおらず、今度はどこへ行ったかと言えば伊東屋敷。
目的はもちろん八重姫とサシ(1対1)で話をつけるため……いわゆる「女のバトル」ですね。
「伊東から北条へ乗り換えたということか。何もかも」
既に頼朝の気持ちが離れたことを告げられた八重姫でしたが、未練を断ち切るよう努めると約束。
政子と八重姫の静かなバトルは穏便にカタがついたのでした。義時に当たり散らすなど、これまでワガママばかりの印象でしたが、頼朝に対する愛情の深さは確かなものだったようです。
その頃、義時は頼朝と二人で朝風呂に浸かりながら、その胸中を打ち明けられます。
北条の婿となって後ろ盾を持ち、平家を滅ぼして朝廷を助け、天下をあるべき姿に戻す……。
大志を語る頼朝から「兄にも話すな」と前置きの上で「お前はわしの頼れる『弟』じゃ」と告げられた義時は、源氏の棟梁たる頼朝の威厳に心服。
これで義時の籠絡完了……もとい、心からの忠誠を誓うようになったのでした。
終わりに
……以上、今回も面倒ごとに巻き込まれて駆けずり回った義時でしたが、急ぐあまりにこぼれてしまった場面も拾っていきましょう。
時は少し戻って、福原の大和田泊で東国のゴタゴタ(頼朝の夜這いに怒り狂う祐親と時政らの悶着)について報告を受けた平清盛(演:松平健)。
清盛は頼朝のことをよく覚えていなかったようで、かつて自分で助命しておきながら「なぜ殺さなかった」と訊ねるなど、当人も、平家政権も少しずつ綻びが見え始めていることを表しているようです。
また、せっかく京都から嫁いできたのに、家族が誰もいなくて「嫌われている」と思い込む時政の新妻・りく。この時点ではまだ後世に伝えられるような悪女ではない設定らしいですが、すでに十分イチモツ腹にありそうに感じられてなりません(演者が宮沢りえだからでしょうか)。
そして政子と実衣のおしゃべりシーン。妹の「あんなの、どこがいいの?」「私には、ただのハッキリしない男にしか見えないけど」というツッコミも馬耳東風。
政子の「生涯かけて支えたいと思える男性に出逢えたの」という言葉に「ハイ、いただきましたー!」と茶化すような合いの手。恐らく内心「これで何度目だよ」と呆れている含みがありありと見てとれました。
他にも頼朝がアジの焼き魚に文句をつけた際、ニッコリと微笑みながら、それでも食べないことを許さない断固たる政子の姿に、空恐ろしさを感じます。
頼朝に対して「佐殿、逃げる(政子から手を引く)なら今の内ですぞ!」「この女はやめておけ、将来すさまじいことになりますぞ!」と視聴していて何度ツッコミを入れかけたことか……。
第2回も息つく暇なく場面の展開が早い早い。面白いけれど、うっかり手洗いなんかに立つと伏線や名場面を見逃してしまいそうで、まったく油断がなりません。
次の第3回「挙兵は慎重に」。おごり高ぶる平家政権に叛旗をひるがえした以仁王(演:木村昴)より、呼応するべく求められた頼朝の決断やいかに。次回も見逃せませんね!
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月