美女に化けていた九尾の狐「玉藻の前」亡骸は殺生石となり恐れられた『玉藻の前伝説』
平安時代の末期、鳥羽上皇に愛されていた「玉藻の前(たまものまえ)」という女性がいました。絶世の美女だった玉藻の前は、たちまち宮廷の人気者となりますが、次第にその正体が九尾の狐だと見破られてしまい、退治されてしまいました。
息も絶え絶えで朝廷を逃げ出した玉藻の前は、那須(現在の栃木県)で力尽きてしまいます。その後、恨みを抱きながら死んでいった玉藻の前の亡骸は近づくものに毒を吐き出して殺してしまうという「殺生石」となり、人々に恐れられました。
そこで、玉藻の前の祟りを鎮めるために、玄翁(げんのう)という名前の曹洞宗の僧侶が、大きな金槌でその石を打ち砕き、祟りを鎮めたそうです。
この玄翁は正式には源翁心昭といい、越後国出身の僧侶でした。同国の国上寺という寺で出家した後、18歳で曹洞宗に改宗し總持寺の峨山韶碩に入門して修行を積み、その後伯耆国に退休寺を開創するなど、各地で活躍していたようで、様々なエピソードが残されています。
玄翁が石を打ち砕いてからは、周辺では何事もなかったかのように人々が平和に暮らせるようになったと伝わっています。
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