桃の節句・ひな祭りに秘められた真の理由。古代日本人の切実な思いとは?:3ページ目
今も存在する「ひな流し」と古代日本人の想い
では現在は、昔ながらのひな流しは行われていないのでしょうか?
決してそんなことはなく、例えば鳥取市用瀬町は「流しびなの里」として知られており、資料館も存在します。また和歌山県の淡島神社でもひな流しの習慣が残っており、ここではひな人形の原型のような、紙でできた簡素な人形が使われています。
こうして見ると、私たちの慣れ親しんだひな祭りというイベントにも、古代からの歴史と変遷があったことが分かります。
もちろん、現代のひな祭りは、基本的に「ケガレを祓う」などという辛気臭いものではありません。きらびやかでめでたく、女の子のための素敵なイベントです。私たちはそれを大いに楽しめばいいでしょう。
一方で、こうしたイベントにも、もともとは子供の健やかな成長を願う親の切実な思いが込められていることを考えると、その奥深さにしみじみしてしまいますね。
参考資料
- 火田博文『本当は怖い日本のしきたり』(彩図社・2019年)
- 一般財団法人 用瀬街ふるさと振興事業団“流しびなの館”公式ホームページ
- 和歌山県ふるさとアーカイブ「淡島神社の雛流し」