女湯に入る特権つき?江戸時代のモテ職業ベスト3「江戸の三男(さんおとこ)」の一つ・与力とは?:3ページ目
女湯に入る特権!?
そんな与力の面白い話として、彼らには「女湯に入る特権」が与えられていました。と言っても、そばに女性たちをはべらせていた訳ではなく、女性たちが利用しない朝の時間帯、誰もいない風呂に入れたのですが、これも職務の内なのです。
八丁堀に限らず、朝っぱらから銭湯に来るような手合いは、カネとヒマを持て余した有閑階級か、あるいはロクに働きもしない穀潰し(ごくつぶし)のどちらか……古来「小人閑居して不善をなす」と言うように、悪事をたくらむのは大抵ヒマ人。という訳で、男湯で交わされる噂話や密談に耳を傾け、盗ty、もとい情報収集に努めていたと言います。
「どうして、女湯に刀掛けがあるんだい?」
よもや銭湯の番台さんも「与力様が秘密捜査でご利用になるからさ」とは言えず、苦笑いするよりなかったでしょう。
また、捕まって欲しくない「お得意さん」には、こっそりと「今日は『八丁堀(に屋敷を構えている与力を指す隠語)』ですよ」などと耳打ちし、会話が盗聴されていることを教えたのかも知れません。
強大な権力を持っているがゆえに周囲からチヤホヤされる反面、どこか油断できない存在として、敬遠されていたことが察せられます。
終わりに
さて、お江戸のモテ職業ベスト3「江戸の三男」、こと与力について紹介して来ましたが、どんな華やかな仕事にも必ず舞台裏での苦労や下積みがあり、またどんな地味に見える仕事でも、必ず人に喜ばれたり、輝いたりする瞬間があるものです。
古来「職業に貴賎なし」とはよく言ったもので、これからも色んな仕事の魅力を発掘していきたいと思います。
※参考文献:
ミニマル+BLOCKBUSTER『イラストでよくわかる 江戸時代の本』彩図社、2020年9月
朝尾直弘ら編『角川新版日本史辞典』角川書店、1996年11月
国史大辞典編集委員会『国史大辞典 14やーわ』吉川弘文館、1993年3月