「あの人、いつも『おとなしい』よね」
こう聞いた時、皆さんはその人に「物静か」「控えめ」と言った印象を受けると思います。
もちろん間違ってはいませんが、それは言葉の由来からすると一側面に過ぎず、本来「おとなしい」という言葉にはもっと色んな意味が含まれていたそうです。
そこで今回は、古典をひもといて「おとなしい」という言葉の由来を調べ、その諸説を紹介したいと思います。
「大人らしい」様子を表す「おとなしい」、ところで大人の定義って?
「おとなしい」という言葉を漢字で書くと「大人しい」となりますが、これは単なる当て字ではなく、本来「大人らしい、大人のような」様子を表す言葉だったようで、現代なら「大人びた」「早熟(ませ)た」というニュアンスの方が近いでしょうか。
しかし、大人っぽいと言われても大人の定義にも色々あるので、この機会に「おとな」の語源も調べてみましょう。
大きくなった人だから「大人」……誰もがそう疑わないであろう「おとな」ですが、仮に「お」は大(おお)の訛り、「と」は人(と。例:隼人)だとして、じゃあ「な」は何なのでしょうか?
調べてみると、「な」とは古代の東国方言で親愛の意味を示す接尾語だったり、あるいは詠嘆の意味に示していたり(例:花の色は移りにけりな)等と考えられます。「すっかり大きくなったんだね」という思いを込めて「大人(おと)な」呼んだのかも知れませんね。
また一説に「乙名(おとな)」とも書かれ、乙には「二番目」という意味があり、生まれたばかりの子供が成長して「人生の第二段階」に達したことを示します。また名は文字通り名前で人間そのものを指し、「第二段階に達した人間」を「おとな」と呼んだそうです。
加えて「乙」は「(定番=甲と違って)オツな趣向だね」などと言うように、趣深い様子を表し、成長してモノの情緒(あはれ)が解るようになってきた人物(名)に対して乙名と呼んだという説もあります。
他にも「音無(おとな)」と書き、成長に伴って落ち着きが増し、ちっとやそっとのことで騒ぎ立てなくなった様子を表したとも言われますが、これは現代の「おとなしい」に最も近いイメージですね。