古来正月の準備(正月事始め)は12月13日からと言いますが、早い方では、もう大掃除を進めているご家庭もあるとか。
さて、そんな目まぐるしい12月は、かつて「師走(しわす)」と呼ばれ、物知りな方なら
「ふだんは弟子(生徒ら)にあれこれ命じてゆったりしている師匠(先生)でさえも走り回らねばならないほど忙しいから、師走と言うんだよ」
と、ご存じかも知れません(筆者は、学校の先生からそう教わりました)。
しかし、師走の語源はそれだけではなかったそうで、調べてみるとなるほど納得。そこで今回は、12月の別名「師走」の語源に関する諸説を紹介したいと思います。
お坊さんは走らなかった?「しはす」の語源は農業に由来?
……と意気込んではみたものの、師走(しはす)の語源については平安時代の時点ですでに判らなくなっていたそうです。
ただ12月を意味する「しはす」という言葉だけが伝わり、色んな意味が考えられ、それぞれの漢字が当てられた結果、より多くの人が納得する「師走」が使われ、現代に伝わったのでした。
かくして真相は闇の中……ですが、後付けではあっても多くの人々が考えた「しはす」の語源は、12月を生活サイクルの中でどのように考えていたのかを知る便(よすが)とはなりますから、以下に並べてみましょう。
一、年間の締めくくりをご先祖様に報告し、無事に過ごせたことを感謝するための法事が多いため、お坊様(法師)が忙しく走り回った(し、はする=馳する)という説
一、年が果てる(終わる)ことから「とし、はつる」が縮まって「しはつ」
一、すべての農事をし果たした(成し終えた)、またはそうあるべき時期を指した「しはつ」
一、四季(春夏秋冬)の最後である冬が極まる(果てると同義、四極-しはつ)という説
一、稲を刈り取り、水のない田を指す「しひあす(仕干浅?)」に由来する説
一、忙しい(せわし)月が訛ったとする説
一、年明けまでもう少し、今「しばし」の月とする説
こうして見ると「しはす」に一番近そうなのは「お坊様が走り回る」説に思えますが、日本の暦は農業サイクルを中心に決められていることが多いですから、いちばん遠い可能性もあります。
それでも、今年が無事に越せたことを神様や仏様、そしてご先祖様に感謝し、新たな年を気持ちよく迎えたいと願った先人たちの思いは、現代の私たちも大切に受け継いでいきたいものです。