痛々しいけど愛おしい♡室町時代の中二病文学「閑吟集」より特選14首を紹介【中】:2ページ目
7、扇の陰で 目を蕩(とろ)めかす 主(ぬし)ある俺を 何とかしょうか しょうかしょうかしょう
【意訳】扇の陰から熱い視線を送るあなたは、人妻であるこの私を、どうなさるおつもりでしょうか?
扇で顔を覆うくらいですから、恐らくやんごとなき身分の男なのでしょう。主とは主人=夫のこと、俺(おれ)という一人称に違和感を覚える方もいるでしょうが、室町時代は人や身分によって、男女関係なく「俺」と称していました。
どうなさるおつもりなの?と心の中で問いかけながら、一度で切らず「なさるの?なさるの?なさる?(しょうかしょうかしょう)」と思わせぶりに繰り返している辺り、密かな期待を捨てきれずにいるようです。
きっとこの女性は、身分の低い冴えない夫に嫁いだけれど、あわよくば光源氏のような素敵なイケメン貴公子に連れ去られたい……そんなドラマチックな展開を夢見ているのかも知れませんね。
8、ただ人には 馴れまじものぢゃ 馴れての後(のち)に 離るるるるるるるるが 大事(だいじ)ぢゃもの
【意訳】考えなしに付き合ってしまうと、後で別れる時が大変だよ。
この歌でまず目を引かれるのは、「る」8連続の強烈なインパクト。これは誤字ではなく、本当にこう詠まれています。
そう大した内容でもありませんが、この「離るるるるるるるる」のワンフレーズに全力を込めて、別れの悲しみを表現したことが解ります。
身分違いの恋に弄(もてあそ)ばれた女性が、無情に捨てられた恨みを教訓として伝えている情景が目に浮かびます。