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古典落語「ちはやふる」の見事なまでのこじつけ!知ったかぶりもここまで来れば面白い

古典落語「ちはやふる」の見事なまでのこじつけ!知ったかぶりもここまで来れば面白い:2ページ目

大関・竜田川の失恋とその後

「……今は昔、竜田川(たつたがわ)という力士がおってのぅ……」

ご隠居の語るところによれば、大関・竜田川が吉原の遊郭へ遊びに行ったところ、千早太夫(ちはや だゆう)という花魁(おいらん。高級遊女)に一目ぼれ。

「つき合って下さい!」

しかし千早は粗暴で男むさい力士が大嫌い。それで竜田川はあっけなく振られてしまう……これを「千早振る」の解釈とこじつけたのです。

傷心の竜田川は、次に千早の妹分である神代(かみよ。こちらも遊女)にアタックするも、「姐(あね)さんに振られたから、仕方なくみたいに言い寄られても……」と、告白を聞き入れてくれません。これが「神代も聞かず」

千早に振られ、神代は聞き入れてくれない……すっかり意気消沈してしまった竜田川はスランプに陥ってしまい、間もなく引退。廃業してからは生家に帰って家業の豆腐屋を継いだそうです。

「……しかしご隠居、仮にも大関にまで昇進した名力士が、遊女に振られたくらいで廃業しちまうモンですかねぇ」

「うるさい奴だ。千早太夫は傾城の美女で、竜田川もそれだけ本気だったんじゃろうよ」

……閑話休題。それから数年後、竜田川の豆腐屋に一人の女乞食がやって来ました。

「もし旦那様、おからを分けて下さいまし……」

おからとは豆腐を作るときに生じる大豆の搾りかす(殻-から)。昨今では栄養満点でヘルシーな食材として人気ですが、昔は無料でくれる、あるいは家畜のエサにするような代物でした。

元より気の優しい竜田川は「あぁいいとも。困った時はお互い様」と店の奥へ取りに行こうとしたところ、ほっかむりの手ぬぐいからのぞいた顔は、忘れもしない千早太夫でした。

「てめぇ、いつぞやはこっぴどく振っておきながら、よくもぬけぬけと顔を出せたもんだなこの野郎!」

と激怒した竜田川は、おからの代わりに手桶の水をぶっかけて追い払ったそうです。これが「からくれないにみずくくる(おからをくれないで、水をかける)」という訳ですが、そこまで聞いて、八っつぁんは又も疑問を投げかけます。

「……しかしご隠居、仮にも花魁にまで昇り詰めた売れっ子の遊女が、いくら何でも乞食なんてしますかねぇ」

「なったもんはなったんだから仕方なかろう。世の中は無常なもんじゃ」

「それと、『くくる』ってのは縄か何かで首か何かを括るんであって、かけるとは違うんじゃ……」

「まったくうるさい奴め、何せ平安時代の和歌じゃから、昔は訛っておったんじゃ(多分)」

「へぇ、そんなもんですかねぇ……あともう一つ」

「何じゃ」

「最後の『とは』って何ですか?」

「あぁ……それはな……そうじゃ、千早とは源氏名で、本名が『とわ』だったんじゃ」

……お後がよろしいようで。

3ページ目 古典への誤解が新たな作品を生み出すのもまた一興

 

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