貝合せって?絵師・鈴木春信の代表作「風俗四季哥仙」から江戸文化を探る!春信の魅力 その3【前編】:3ページ目
洲浜
上記にある“州浜”とは、流れ込む川の勢いにまかせて出来た入り組んだ浜辺のことをいいます。日本は四方を海に囲まれています。昔、日本人は海の向こうから神々がやって来ると信じ、陸と海の境目である海辺を聖なるものと考えていたという説もあります。
たとえば家紋で“洲浜紋”という紋がありますが、このような形です。
このように入り組んだ洲浜形の台の上に、“風流善美を尽くした洲浜の台”を飾ったということですから、美しい海岸のたとえとされる“白砂青松”の言葉通り、白い砂と青々とした松をしつらえ、縁起の良い鶴亀や長寿を意味する翁や媼(老女)の人形を木の元に置き、不老不死の仙山として信仰される蓬莱山などをしつらえるなどして、華やかな島台という物を作って飾ったのでしょう。
島台は神が依り憑く場所とも考えられ、様々な宴に飾られました。
上記の絵の中央に置かれているのが島台です。上記の絵は結婚の宴の場面を描いたものです。江戸時代には縁起物として結婚の場にも飾られました。
鈴木春信の絵にも結婚の宴の場面を描いたものがあります。
上記の絵の右下に、やはり“島台”が置かれています。それにしても結婚の宴の様子が生き生きと描かれています。様々な立場の人がそれぞれに話をしている声が聞こえてくるようです。
潮干狩り説は間違い
二人の男女の足元を見ると、落ちている貝は巻き貝やハマグリのような貝などの様々な貝です。“貝合せ”は二手に分かれて貝の形や珍しさなどを競うものでもあったことから、二人は“貝合せ”に使う貝を探しているのでしょう。
単なる潮干狩りではなかったのですね。
近日公開の後編につづきます。