前回のあらすじ
眉目秀麗・文武両道で知られた平家一門の貴公子・平清経(たいらの きよつね)は、初陣以来、反平家勢力との戦いに赫々たる武勲を立てました。
しかし平家一門の権勢はすでに衰えつつあり、ついには都落ちを余儀なくされます。
京の都を逃げ出した平家一門は、リベンジを期するため、かつて故・平清盛が遷都を強行した福原(現:兵庫県神戸市)の地を目指すのですが……
前回の記事
諸行無常の響きあり…裏切りに絶望した悲劇の貴公子・平清経の生涯(上)
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはすおごれる人も久しからず 唯春の夜の夢のごとしたけき者も遂にはほろびぬ 偏に風の前の塵に同じ……[captio…
荒れ果てた「平清盛・夢の都」福原を焼き払う
さて、都落ちした清経ら平家一門は福原まで落ち延びて来ますが、永らく放置されていたかつての都は、見る影もなく荒れ果てていました。
かつて平清盛が海洋国家として宋(そう。中国の古代王朝)と盛んに交易しようと強行した福原への遷都は、1年も経たずに断念。せっかく築き上げた都は放棄されていたのです。
「これから源氏の侵攻に備えねばならない状況で、この福原を復興させる余力はない」
仕方なく平家一門は残存している建造物などが敵に利用されないよう、福原を火の海と焼き払ったのでした。
「おぉ……相国(しょうこく。清盛の称号)様の夢見られた都が燃える……何もかもが灰燼に帰する……」
かつて大海原に大志を馳せ、子供のように眼を輝かせていた生前の清盛を知る者たちは、焼け落ちる「夢の都」に涙したことでしょう。
福原を失った無念さを噛み締め、源氏に対してリベンジの闘志を燃やす者が多数いた一方、清経は世の無常さを悟ってしまったようで、この頃から平家一門の前途を悲観するようになります。
2ページ目 かつての家人に裏切られ、大宰府からも追われてしまう