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前回に引き続き、江戸の浮世絵師・鈴木春信の「風俗四季哥仙」から今回は4月の「風俗四季哥仙 卯月」をご紹介します。
1月については「風俗四季哥仙 立春」を、2月については「風俗四季哥仙 竹間鶯・二月」を、3月については「風俗四季哥仙 三月」「風俗四季哥仙 弥生」をご覧下さい。
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「風俗四季哥仙 卯月」
『風俗四季哥仙 卯月』の“卯月”は日本の和風月名で4月にあたりますが、江戸時代は旧暦を使用していたため、実際には現在の4月下旬から6月上旬頃を指します。「卯月」は和歌の世界では夏の季語として用いられています。
それではこの作品の上部に描かれた和歌を詠み解いていきましょう。
人もとへ咲や卯月の花さかり こてふに似たる宿の垣ねを
白河殿七百首:夏136
(意訳)人々の住まう所はウツギの花が今が盛りと咲いている。宿の垣根(の葉の茂り)さえ、花々を飛び交う蝶に似ている。
この和歌の意訳は、どうしてもウラが取れず(警察か?)筆者が解釈したものです。歌詠みの先達の方がご覧になったらお叱りをうける可能性もありますが、ご了承ご鞭撻のほどお願いいたします。
まず、この作品の題ともされている「卯月」ですが、卯の花(ウツギの花)の咲く季節なので卯月と名付けられました。
卯の花(ウツギの花)は初夏の風物詩とも言われています。
童謡の「夏は来ぬ」の歌詞を思い出してみて下さい。
「夏は来ぬ」
卯の花の匂う垣根に
ほととぎす早も来鳴きて
忍び音もらす
夏は来ぬ
なにかこの歌詞は、上記の和歌にも通じるような内容ですね。そして和歌の頭に描かれている鳥は「夏は来ぬ」にもあるように、ホトトギスでしょう。
「枕草子」の中にもホトトギスの鳴き音を聴きに外出した際に、ウツギの花が満開でその枝を一折して持ち帰るという場面があります。
ちなみに『白河殿七百首』は、鎌倉中期の文永二年(1265年)七月七日に白河殿において、後嵯峨院主催の歌会から藤原為家らが撰者としてまとめた和歌集です。この歌会は「探題」つまり籤引きなどで当たった題で歌を詠む形式で行われました。
今回、この作品に記された和歌の下の句の部分 “こてふに似たる宿の垣ねを”ですが、この絵にそれに重ねられたように思われる部分があります。
この絵の宿の中にいる二人の女性の前にある窓の格子、この色は普通は茶色のような色で描かれると思うのですが、それが周りの家の色からは少し浮き出すような若草色で描かれています。これは垣根の柵と同系の色です。
二人の女性が外の男性を見てささやきあっている様子は、蝶がハラハラと飛び交う様子にも例えられないでしょうか。