言葉は相手の為にこそ。山岡鉄舟が清水次郎長に教えられた真の「頭のよさ」とは?:2ページ目
先生の何が大ぇして立派なンだか……次郎長の苦言
さて、そんな事から始まった鉄舟と次郎長のつき合いですが、鉄舟にとって次郎長は「学問を超えた智慧」の持ち主であり、その嗅覚と直感に少なからず影響を受けたようです。
二人がつき合って間もない頃、次郎長がこんな事を言いました。
「よぅ先生。おらぁ先生がみんなから『大ぇしたもんだ、立派なもんだ』なんて言われているが、いざこうしてつき合って見ると、一体ぜんたい先生の何が大ぇして立派なンだか、俺にゃあさっぱり解ンねぇずら」
要は「お前ェなんぞ大ェした事ァねぇ」と言っているのと同じで、随分な挨拶もあったものです。普通ならここで怒り出すなり絶交なりするものですが、鉄舟は「次郎長ほどの人物が言うのだから、そこに教訓がある筈だ」と、謙虚になってその理由を訊ねると、
「俺ァ先生の書いて寄越す手紙がいっさら読めねェずら。まァ学のある先生のこったからありがてぇ文句でも書いてあンだろうが、難しい言葉を丸呑みに覚えてそのまま言うなら九官鳥だって出来るじゃんけ……相手が読めねぇようなモン書いて寄越す人間が立派とは、俺にゃァどうしても思えねェずら」
そう聞いた鉄舟は、深く感じ入ったそうです。
3ページ目 言葉は相手に伝わらなければこれまた無意味な呪文に過ぎない