ペーターが弁太、クララが久良子!?大正時代の「アルプスの少女 ハイジ」和訳版の破壊力スゴい(笑):3ページ目
さて、みなさん気になる方と言えばロッテンマイヤーさんのことでしょう。彼女は「古井さん」と名前を変えて登場。なんとなく古くから屋敷に勤めているとか、お局さんを連想しますね。
彼女が、楓を連れてきた伯母の伊達さんに向かって発した言葉が強烈。
「伊達さん、之れは低能児ですの?」
現在なら何かと問題になりそうな発言です。
古井さんは口調は丁寧でべらんめえではありませんが、より言葉尻が鋭く、慣れ親しんだアニメ版よりも更に冷たく怖い印象です。
ちなみに楓の洗礼名。久良子の家は厳格なクリスチャンの家なので、洗礼を受けてない子供には相手はさせらない、というくだりがありましたね。古井さんに聞かれた伊達さん。なぜか弱々しく「アデライド・・・」と答えます。洗礼名はそのまま西洋名でした。まあ洗礼名は古今東西聖書から借り受けるので、しょうがないですね(ハイジは母親の名前が洗礼名です)。
しかし楓の母の名はアデライド・・・逆に違和感を生まなかったのでしょうか。
物語は広く知られている通りなので、これ以上追うのはやめますが、言葉遣いが違うとまるで別の小説を読むような楽しさがありますので、お暇なときにいかがでしょう。古典的名作が日本でどのように翻訳されたのか、新たな面白さが発見できますよ。
参考文献:『楓物語』福音書館、大正14年、ヨハンナ・スパイリ著