妻は与謝野晶子!男性の強さと繊細さを詠んだ、与謝野鉄幹の短歌を紹介:3ページ目
おわりに
「やは(柔)肌の あつ(熱)き血潮(ちしほ)に 觸(ふ)れも見で
さびしからずや 道を説く君」 晶子【意訳】私(若い女性)の肌にふれもしないで、その下に脈打つ血潮(気持ち)を知りもしないで、堅苦しい話ばっかり。ねぇ、寂しくないの?
かつて結婚前の与謝野晶子(旧戸籍名:鳳志やう)が、自分に和歌を指導している鉄幹に向けて詠んだ、とも言われる歌ですが、単に「晶子が積極的なのに、鉄幹は朴念仁で」……なんて話ではありません。
(寂しいに決まっているじゃないですか!触れたいに決まっているじゃないですか!)
……勝手に代弁してしまいましたが、鉄幹は「触れたかったからこそ、触れなかった」のです。
大切に思うからこそ、それに見合うだけの自分であろうと、いっときの私情を越えて公益に志すのが男性の心意気。
「いちゃいちゃするのは、やるべき事をやってから」
今どきあまり流行らないスタイルかも知れませんが、そんな昔ながらの生き方も、とても愛おしく、味わい深く思います。
※参考文献:中央公論社『日本の詩歌 4』昭和43年8月15日 初版