妻は与謝野晶子!男性の強さと繊細さを詠んだ、与謝野鉄幹の短歌を紹介:2ページ目
あふれ出す愛情・男性の強さと繊細さ
さて、さっそく短歌を読み解いてみましょう。
その前半(五・七・五)は「われ男の子……」と宣言する通り、日本男子の「強さ」をこれでもか!とばかりに主張しています。
男に生まれたからは経世済民(※1)の心意気で天下に臨み、名を上げ身を立て、一朝有事(※2)とあらば醜の御盾(※3)と剣(つるぎ)とり……
(※1)けいせいさいみん:世を経(おさ)め、民を済(救)う意で「経済」の語源
(※2)いっちょうゆうじ:テロや外敵の襲来など、緊急事態
(※3)しこのみたて:国家を護る盾となる武人の自称(謙譲語)
そんな、いかにも武張った男性像を詠み上げながら、続く後半(七・七)では俄かに調子が一転します。
「詩の子 恋の子 あゝもだえの子」
本当は大好きな女の子に自分の気持ちを伝えたくて、拙いボキャブラリーと汚い筆で一生懸命にラブレター(詩)などしたため、あぁこれを渡すべきか、いや渡すまいか悩んだ記憶が、皆さんにもあるかと思います。
そして一晩悩んだ挙げ句、朝になって読み返したら恥ずかしくなってせっかくのラブレターを引き裂いた記憶……皆さんにも、あるかと思います。
見方によっては「なんと軟弱な!」と思われる向きもありましょうが、その不器用な繊細さこそが男性の弱さのみならず、強さともなるのです。
愛情あふれればこそ、男性も女性も己が務めに汗を流し、大切なものを護るためなら、敵とだって戦うのです。