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武田信玄の「喧嘩両成敗」に異議アリ!武田四天王の内藤修理が訴えた「男道」の精神

武田信玄の「喧嘩両成敗」に異議アリ!武田四天王の内藤修理が訴えた「男道」の精神:2ページ目

内藤修理かく語りき「男道(おとこどう)」とは

内藤修理は言います。

無益な喧嘩をなくすため、その理非を論ぜず両成敗という主旨そのものは解らんでもありません。平時ならともかく、戦の陣中で喧嘩なんかされた日にゃあ、いちいち取り調べなんかしちゃ居られませんやな。まぁ、味方の勝利よりも私情を優先するような馬鹿共には『武運が尽きた』とでも思って死んでもらいましょう

【原文】「尤も喧嘩なき樣にとの義(ぎ)理非を不論(ろんぜず)両方御成敗に付ては相違有るまじく候(そうろう)……(後略)……」

※出典:『甲陽軍鑑』品第十六より、以下同じ。

「……言うまでもなく、身分や年齢に関係なく互いを尊重し合い、喧嘩しないよう心がけるのが大前提です。しかし、もし命惜しさに理不尽な仕打ちも泣き寝入りするような腰抜けばかりになっちまったら、面倒ごともなくなって結構に思えるかも知れませんが、御屋形様にとって、これ以上の損失はありません」

【原文】「御用に可立(たつべき)者は老若によらずたがひ(互い)の義をば堪忍仕るべし但し不足をあたへられてもおめおめと堪忍仕るほどの者はさのみ御用にも立つまじく候左候(さにそうろう)て諸人まろ(丸)くなり何をも堪忍いたせと上意においてはいかにもぶじ(無事)にはみへ申すべく候雖然(そうらえども)それは大なる上(樣)の御損なり……(後略)……」

「なぜなら、法に縛られて『事なかれ主義』が蔓延すれば、侮辱されても泣き寝入りする(男道のきっかけを外す)ような腰抜けばかりが武田家中に残り、まともな武士は(成敗or追放されて)誰一人いなくなっちまうからです」

【原文】「其故(そのゆえ)は法をおもんじ奉り何事も無事にとばかりならば諸侍(しょざむらい)男道(おとこどう)のきつかけをはづしみな不足を堪忍仕る臆病者になり候はん叉男のきつかけをばはづすまじきとて男を立て候はゞ其身の疵になる儀をあらため候べし其改むるをばやかどがちなりとて法度をそむくに罷り成りさだめて御成敗か不然(しからず)は國をおはるるかにて候べし然らば則ちよき侍一人もな(無)うして信玄公の御鋒(みさき)は悉くよは(弱)かるべき義(ぎ)眼前(がんぜん)に候(そうろう)……(後略)……」

内藤修理が懸念するのは、いっときの感情でカッとなるような馬鹿者が処刑されることではなく、それよりも(両成敗は嫌だろうから)どうせ「手は出せまい」とタカをくくって相手を侮辱するような卑怯者が横行する事態でした。

結局、甲州法度之次第が書き換えられた訳ではありませんが、その懸念については信玄公もよくご承知おきであったらしく、そのような卑怯者が幅を利かせるような事態は防がれたようです。

3ページ目 暴力よりも恥ずべき振舞い

 

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