平和な世にヒゲは要らぬ!?武士からヒゲが一掃、江戸時代の「大髭禁止令」とは:3ページ目
禁令第二回目「さきざき停禁せられしかど……」
さて、このまま手をこまねいているわけにもいかず、江戸幕府はさっそく……先の禁令より22年後となる正保ニ1645年7月18日、二度目の禁令を発しました。
【意訳】
「いいか?差していい刀の長さは約88㎝、脇差は約54.5㎝までだ。でっかい角ばった鍔とか、朱色や黄色の鞘とか、ド派手なデコレーションは禁止。それと奇抜な髪形や男むさいヒゲもろもろ禁止。前にも禁止したはずだが、最近いささか目に余るから、もう一回言っておく。今度こそ、ちゃんと守れよ!」【原文】
「刀は二尺九寸。脇差は壱尺八寸を限とすべし。大鍔。大角鍔。朱又黄の鞘。又大撫附。大額。大そりさげ。大髯。さきざき停禁せられしかど。頃日いさゝかみゆれば。再び触示さるゝとなり」
※『大猷院殿御実紀巻六十一』より
二回目では刀や脇差の長さも厳密に規定しており、これで「大刀は禁止と言われたが、それがしにとってこの刀は小さいのだ!」などという、主観的な言い逃れを封じたのでしょうか。
また、ヒゲについても「下鬚(あごヒゲ)」から「大髯(口元全体を覆う男むさいヒゲ)」と規制対象を広げ、口ヒゲ(髭)や頬ヒゲ(髯)までも禁止。
何が何でも「ヒゲはダメ!」という当局の意志が伝わってくるようです。
それにしても、さきざき禁令が出されたにも関わらず、あまりにみんなが守ってくれないからもう一回出す……という辺りに、良くも悪くも牧歌的な江戸時代の空気を感じます。
4ページ目 幕府の顔も三度まで……ついに出された「大髭禁止令」