情緒あふれる風景、江戸時代の吉原遊廓で夜見世の最初に行う「見世張り」とは?:2ページ目
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いよいよ花魁登場
さて、それが鳴り響いている間に、2階では化粧や着替えを済ませた花魁の姐さんがすうっと障子を開いて部屋から出てきます。上草履をぱたぁんぱたぁんと鳴らしながら、ゆったり階段を下りてくる姿はまさに天女のようでした。
この中で客がすでに仲之町の茶屋で待っている者は見世から出て花魁道中をします。客がまだ決まっていない者は新造や下級女郎が並んでいる張見世の、正面の目立つ席に座ります。
画像:歌麿「扇屋十二美人張見世」
全員が揃うと下足番はジャラジャラ細かく札を打ち、鮮やかな手つきでその札を広げて置きました。下足札が綺麗に並ぶと、新造たちは長唄「二人椀久」の一節を賑やかに三度掻き鳴らして景気良く弾き納めました。この曲目は見世によって多少バラエティがあったようです。
それから女郎全員で商売繁盛祈って手を打ち、楼主のいる奥に向かって「お目出度う」と挨拶しました。
さあ、いよいよ夜見世の始まりです。
画像:葛飾応為「吉原格子先之図」Wikipediaより
どうでしょう、吉原遊廓の情緒を感じていただくことはできたでしょうか。この風景を知っておけば今後浮世絵などを見る時にも当時の空気感をいっそう感じることができるかもしれませんね。
参考文献:三好一光「江戸風俗語事典」青蛙房
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