情緒あふれる風景、江戸時代の吉原遊廓で夜見世の最初に行う「見世張り」とは?
夜の吉原遊廓。夜見世が始まる時には、女郎たちが一斉に格子窓の張見世に並ぶ「見世張り」をしました。いったいどんな様子だったのでしょうか。今回は想像力を膨らませて吉原の世界に浸ってみてください。
新造の清掻と下足番の掛け合い
吉原遊廓の夜見世が始まるのは暮れ六つ(午後6時)。
若い見習い女郎、新造たちが姐さん女郎より先に格子の張見世に出て、三味線の調子を合わせて清掻(すががき)を弾く準備をします。ちなみに張見世の正面に座るのは上級女郎なので、見習いの新造は左右の脇の席に着きます。
1階の奥に居る楼主は夜見世の時刻が近づくと神棚に商売繁盛を願って拍子木を打ち、神棚の鈴をシャンシャンと鳴らします。
その音を聞くと準備していた新造たちがひとつ景気良く三味線の糸をはじき、清掻が始まります。
画像:文・十返舎一九/絵・喜多川歌麿「青楼絵抄年中行事 夜見世の図」国立国会図書館蔵
もう一つ忘れてはならないのが男衆。吉原で働く男衆は「若い者」「若い衆」なんて呼ばれていました。忙しく働く彼らの中でも見世張りの時に特に注目を集めたのは、下足番(客の下足を預かって下足札(番号札)をつけて下駄箱にしまう役目)。下足番は新造たちの清掻に合わせて紐でつるした木の下足札の束をリズムよくカランカランと鳴らして合いの手を入れました。こうした清掻はそれぞれの見世で行われ、吉原遊廓のあちこちから聞こえてくるその独特の音色は、非常に情緒があったといいます。
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