江戸時代に活躍した人気浮世絵師といえば葛飾北斎や歌川広重、歌川国芳などがあげられますが、浮世絵の中でも美人画の評価が高かった絵師というと喜多川歌麿(きたがわうたまろ)ははずせません。
喜多川歌麿が描く美人画は繊細な描線を特徴で、「寛政三美人」や「ポッピンを吹く女」を始めとした歌麿の美人画は海外でも高く評価されています。
そんな美人画の代名詞ともいえる喜多川歌麿ですが、美人画以外の作品でも数々の名作を残しています。今回紹介する作品が名作の一つと言っても過言ではない「画本虫撰」です。
「画本虫撰(がほんむしえらび)※」は江戸時代の全15図からなる狂歌絵本で、狂歌とは滑稽さや皮肉などを盛り込んだカジュアルな短歌のことを言います。この本は見開き2ページの中に虫を2匹描き、その2匹の虫にちなんだ狂歌を2句歌うというとても面白い体裁になっていて、虫の世界を覗いているかのような感覚になってきます。
※ 原本は「画本虫ゑらみ」。意味は同じ。
絵はすべて喜多川歌麿によるものですが、なんといっても植物や虫の描画力の高さが素晴らしいのです。美人画を得意とした歌麿ですが、花鳥画においてもその才能がダダ漏れなわけです。狂歌絵本となっていますが、植物と虫の図鑑と称しても良いかもしれまえん。
この「画本虫撰」は歌麿の出世作ともいえるものなんだそうですが、確かにこの才能を世が放っておくわけがありません。その後の活躍で歌麿の美人画は開花します。美人画のほうが後なんですね。
それでは、喜多川歌麿による「画本虫撰」をどうぞ!
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