男女が性転換して生活?異色の輝きを放つ平安時代の王朝文学「とりかへばや物語」:2ページ目
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最後は役割を「とりかへ」て、めでたしめでたし
そこへ登場するのが、プレイボーイの宰相中将です。彼が登場することで、この物語の人間関係は波乱に満ちたものとなっていきます。
宰相中将は、美貌という評判高い尚侍(弟)に近付くため、その兄弟の若君(姉)の元を訪れ、その際に若君(姉)と婚姻関係にあった「四の君」と関係を持ち、子供までできてしまいます。若君(姉)は、女同士の自分と四の君の間に子供ができるはずはないと困惑します。
宰相中将はそのまま四の君と関係を続けますが、夏のある夜、左大臣邸に戻っていた若君(姉)と歌を詠み交わしているうちに、ただならぬ仲になってしまいます。
そして物語は、若君(姉)が子供を妊娠してしまうというとんでもない事態がきっかけで、一気にクライマックスへと向かいます。最後は無事に(?)姉弟がそれぞれの役割を交換して元の性別に戻り、めでたく万事うまく収まります。
「男尊女卑」の時代には低評価。でも読み継がれてきた名作
この作品は、明治時代以降の「男尊女卑」の考え方が主流となった時代には低く評価されるなど、時代によって賛否両論を呼びました。しかし近年では、この物語を原作とした『ざ・ちぇんじ(氷室冴子)』『とりかえ・ばや(さいとうちほ)』などのマンガも出版されて人気を得るなど、再度評価されるようになってきています。
平安時代も今も、「本来の自分と違う自分に変身して、違った人生を歩んでみたい」という願望は、多くの人の心の中にあるのかもしれませんね。
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