幕末の志士たちも惚れた!強者・楠木正成のアツ過ぎる一生[最終章]:3ページ目
正成は、七度どころか無限大に生まれ変わって今も人気は健在!
終戦を迎えてからも正成を取り巻く環境には不遇が続き、戦中の軍部と同様に占領軍も日本統治のために検閲を厳格化し、正成も一時は教科書から消されます。戦後は歴史研究への抑圧が無くなったことから中世史の研究が一気に発展し、正成を見捨てた新田義貞、謀反人とされた尊氏の名誉も徐々に回復されていきましたが、正成の人気は衰えませんでした。
それどころか、湊川神社は“楠公さん”と呼ばれて親しまれ、皇居前の正成像、千早城や赤坂城、観心寺と言ったゆかりの地は信仰や観光の名所になり、吉川英治さんが尊氏を主役にして書いた『私本太平記』を始めとした歴史小説でも、相変わらず愛されました。明治政府の国策、占領軍の検閲など政権の圧力を跳ね除けるパワーと人気は、豪傑と言う意味での悪党に原点回帰したと言えるかもしれません。
中でも『私本太平記』を原作にした大河ドラマ『太平記』では、温和で土を愛するが戦いでは非常に強い正成を武田鉄矢さんが魅力的に演じており、話題となりました。『Qさま!』で正成と龍馬の関連性を紹介していたのが、両者を演じた経験がある武田さんと言うのも縁を感じますね。
楠木正成は“七回生まれ変わって朝敵を倒す”と言う忠誠心溢れる最後の言葉に注目されがちですが、そうした忠義だけが愛される要因ではありません。悪党と呼ばれた頃から忘れなかった民への気配り、敵に回った尊氏と互いを認め合った友情、我が子の前途を気遣う愛情に代表されるヒューマニズムと正義感を人一倍持ち続けていたからこそ、時代を超えても正成は愛されるのだと筆者は考えます。
七回どころか、無限大に生まれ変わって飛躍し続ける永遠なるヒーローとして、正成はこれからも存在し続けていくことでしょう。
画像:ウィキペディア『楠木正成』『湊川神社』『観心寺』より