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森鴎外の名作・山椒太夫、原作は子ども向けの元ネタとは思えないかなりヘビーなものだった

森鴎外の名作・山椒太夫、原作は子ども向けの元ネタとは思えないかなりヘビーなものだった

怒りの厨子王のお仕置きが過激過ぎる!

丹後の国司になった厨子王は山椒太夫一家を国分寺に招待し、姉を殺したことに一片の反省も見せない太夫らを叱責しつつも、寛大な姿勢を見せます。(安寿と厨子王に親切だった太郎と次郎は放免)

「恨みを報ずるのではなく、恩情で報いましょうぞ。大国と小国、どちらが欲しいかな?」

それに対して、国司に媚びて領土を貰おうとあらかじめ太夫と打ち合わせをしていた三郎が返答しました。

「我が家は子沢山だから、広い大国が欲しいです」

それを聞いた厨子王は、

「良かろう…では、広い黄泉の国(=死)を与えてやろうではないか!

と、山椒大夫に死刑判決を言い渡したのでした。それも、自分の子である三郎に竹のノコギリで首を斬られると言う残酷なもの。非道さでいえば三郎も負けていません。

「殿様も兄貴達も、自分の非は棚上げするとは卑怯だな!父上、この俺があの世に送ってあげましょう!」

…もはや、これでは太夫ではなく三郎が悪のラスボスでしかありませんね。しかしその後、ふてぶてしい捨て台詞を吐いて父を処刑した三郎も、同じ方法で処刑されたのでした。

今でも現代人の心に響く説経節

どうでしたか?鴎外版では厨子王の圧力に屈して渋々奴隷を開放し、最終的には改心した山椒太夫と三郎ですが、原作では徹底的に成敗され、厨子王らを売り飛ばした裏切り者の山岡太夫も厨子王達によって倒されます。

一方、良心的な太郎は出家し、心優しい次郎は太夫の後継者として領土と位を厨子王から賜って立派な領主になるので、説経節が因果応報と勧善懲悪を説いた仏教的なものであったことを改めて感じさせるものですね。

なお、森鴎外の『山椒太夫』は青空文庫で読むことが出来ます。子供時代を懐かしみたい方はもちろん、まだ読んでいないという方も楽しめます。

また、鴎外版が書かれるきっかけとなった説経節を詩人の伊藤比呂美さんが手掛けた現代語訳がインターネットで公開されていますので、興味のある方はご観賞してみては如何でしょうか?

 

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