国立公文書館の公式Twitterが「今なら、さしずめファッションモンスター」と表現した江戸時代に描かれた妖怪が話題になっています。
画像は、わが国に渡来し、またたく間にはびこった珍獣「着飾」。破産をもたらす「誠に恐ろしきけだもの」で、習性はいつも上を見ていて無い袖を振りたがる、見栄っ張りで、贅沢好きだそうです。今なら、さしずめファッションモンスターかな? pic.twitter.com/RMOah8p8JK
— 国立公文書館 (@JPNatArchives) 2015, 12月 13
この妖怪は初めて知りましたが、他の妖怪にはないファッションスタイルであります。この妖怪の名は「着飾(きかざり)」。名前・容姿ともにまさにオシャレを感じさせてくれるこの妖怪。一体どんな妖怪なのでしょうか?
顔は面長で呑気な表情が特徴ですが、羽織っている服は現代のアロハシャツのよう。腰には赤い布のようなスカートのようなものを巻いて足元は赤の鼻緒の下駄を履いています。頭には花魁のようにかんざしがたくさん。
この妖怪は江戸時代に藤川貞(藤川 整斎)が書き留めた天保雑記の中で描かれたもの。天保雑記の中の説明によると、インドでは「美々獅子」、中国では「全盛蛇」、オランダでは「ハデスギ」「ヲゴルキ」と呼ばれる獣で、日本にもはびこった珍獣とされています。(国立公文書館デジタルアーカイブより)
習性は見栄っ張りで贅沢好きで、破産をもたらす「誠に恐ろしきけだもの」とのこと。もちろん存在した事実はなくこの妖怪は架空の獣。天保雑記を記した当時は幕府が贅沢を取り締まった天保の改革の頃で、これを風刺して描いたもの。天保の改革で贅沢を禁止した水野忠邦を揶揄した妖怪とも言われています。
江戸時代にはこういった形で雑記や浮世絵、草子などの中に幕府への不満を忍ばせて、憂さ晴らしをしていたのでしょう。風刺画からは当時の庶民がどういった思いで浮世を生きていたのかが垣間見えて面白いものですね。