世界で“japan”と呼ばれる日本の漆工芸、9000年前の縄文時代にすでに技巧の基礎は完成していた!:2ページ目
定説を覆す?縄文時代の高度な漆技術
ヨーロッパでこれほど漆工芸品に注目が集まった理由の一つは、ウルシの木がアジア以外では育たず、西洋の人々にとっては「未知の素材」だったからです。
そんな漆工芸の起源は、長年、約7000年前の中国・浙江省(せっこうしょう)の遺跡とされ、その技術が日本列島へと伝わった可能性が高いと考えられてきました。
ところが近年、この定説を揺るがす大発見がありました。北海道函館市の垣ノ島(かきのしま)遺跡から、約9000年前の縄文時代のものとされる漆塗りの副葬品(装飾品)が発見されたのです。これが世界最古の漆工芸品である可能性が浮上し、日本独自の起源説も語られるようになりました。
また縄文時代の早い時期の福井県や山形県などの遺跡からは、漆塗りの木製の器や、漆を塗り重ねて幾何学文様を描いた土器、さらには巻貝を螺鈿のようにあしらったものまで見つかっています。
これら漆工芸に使われるウルシは、本来、日本列島には自生していなかった外来種のウルシの木から採取したと考えられています。縄文人はそのウルシの木を管理・栽培し、計画的に樹液を利用していたようです。
漆は縄文時代は祭祀用の土器や弓、櫛などに用いられ、時代と共にその利用は広がり、やがて仏具や仏像、城などの建築にも使われるようになりました。
今に続く変わらぬ手間暇
漆工芸品を作るには、気の遠くなるような手間と時間がかかります。まずはウルシの木に傷をつけ、一滴ずつ樹液を採取することから始まります。
集めた樹液を熱しながら撹拌(かくはん)し水分を蒸発させ、そこにベンガラや水銀朱を混ぜ合わせることで、あの色鮮やかな「赤色漆」が誕生します。
これらの工程を正確に踏まなければ、漆独特の艶や発色は生まれません。縄文時代の漆工芸品が今なおその美しさを保っていることは、現代とほぼ変わらない技術で作られている証拠です。
また縄文時代には、ウルシは塗料としてだけでなく、優れた「接着剤」としても活躍していました。割れてしまった土器をウルシで綺麗に修復した痕跡も数多く見つかっています。
現代に息づく伝統技巧の基礎は、すでに縄文時代に完成していたといえそうです。近年では安価なプラスチック製品などに置き換わった部分もありますが、今、改めてそのサステナブルな価値や手触りの温もりが再評価され、活躍の場を広げています。
