朝ドラ「風、薫る」謎の女郎・夕凪(村上穂乃佳)は実在した花魁?遊郭の悲劇がつないだ“看護”の未来:3ページ目
また、「風、薫る」の原案『明治のナイチンゲール 大関和物語』田中ひかる著では、やはり三宮八重野の手術が終わった頃、根津遊郭の花魁が客と心中しようとカミソリで喉を切ったものの死にきれず病院に運び込まれてきます。「相手は帝国大学の学生で亡くなったらしい」と噂する看護見習生たちに、「遊郭の心中事件は、客の身勝手による無理心中が多いと聞く」と大関和が言いました。
花魁の本名は「山本キク」。大関和は、三宮八重野から預かったお菓子や果物などをキクに差し入れし、新約聖書を渡します。そこに「ここを読みなさい」とばかりに印が付いているので和は「明日のことを思い悩まずに、目の前のことだけを考えなさいというような意味ですよ」と要約して教えます。それをきっかけにキクは聖書を読むようになったそうです。
いずれにしても、この心中事件をおこした「花紫」がきっかけとなり、大関和と直美のモデルである鈴木雅は「遊郭を出た人たちが安心して暮らせる場所と、自立できる職業が必要」だと考えます。そして二人は「看護婦」という仕事をもっと広めて需要が増すように頑張るのですが。
このときの思いがのちに、大関和が伝道活動や廃娼婦運動(※)を熱心に行うことにつながっていくのでしょう。
※廃娼婦運動:売春婦公認(公娼)制度を廃止する法規の獲得を目ざす運動。 市民的人権擁護の立場からの公娼解放(自由廃業の推進を含む)、キリスト教的立場での救済・更生の運動、婦人解放運動の立場からの人身売買そのものの禁止運動など、さまざまな立場から進められた。
また近代日本における初の女性医師・荻野吟子と親しかった鈴木雅は、「廃娼まで至らずとも、遊郭こそ女医や看護婦が必要な場所」いう考えで意気投合。大関和を吟子に紹介し、吉原で娼妓たちに食事や客との性行為後の衛生指導などを行います。
娼妓たちの中には「自分も看護婦になりたい」という人も出てきて、和はサポートも行っています。鈴木雅にも大関和にも「花紫」の心中事件がずっと心の中に根付いていたのだと思います。
