江戸時代の“戦わない武士”たちの実態──内職や借金に頼っていた、武士の深刻すぎる現実とは:2ページ目
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内職や借金に頼る武士たち
生活が苦しくなると、内職をする武士も増えていきます。傘作りや草履編み、子どもへの学問指導など、空いた時間を使って収入を補いました。文章を書いて報酬を得る武士もいました。
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それでも足りない場合、商人からお金を借りることになります。身分制度では武士が上とされていましたが、経済的には商人に頼らざるを得ませんでした。
身分と現実のあいだで揺れる心
この「身分は上だが、金銭面では弱い」という状況は、武士にとって大きな悩みでした。さらに、武士は質素な生活を求められる一方で、「武士としての体面」を守ることも求められます。
あまりにみすぼらしい姿では外を歩けず、家の名誉にも関わります。そのため、借金をしてでも身なりを整える武士も少なくありませんでした。
刀を抜かない時代が育てた力
刀を差して堂々と歩きながら、心の中では生活の不安や借金の重みを抱えている。それが、平和な江戸時代を生きた多くの武士の現実でした。
しかし、この戦の少ない時代は、武士に新しい力を与えました。学び、考え、教える力です。江戸時代に広がった教育や学問は、明治時代の近代化を支える土台の一つになったとも言われています。
江戸時代の武士は、戦えない存在だったのではありません。時代の変化に合わせて役割を変えながら、生き方を模索した人びとでした。刀を振るう力だけでなく、学びによって社会を支える力もまた、この時代の武士が身につけた重要な力だったのです。
参考文献
山本博文『NHKブックス 江戸に学ぶ日本のかたち』(2009 NHK出版)
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