朝ドラ「ばけばけ」実際にあった花田旅館!現在は?劇中でも忠実に再現された旅館での実話とは:2ページ目
お信との逸話と小泉セツとの出会い
富田旅館において、ハーンと密接に関わったのが女中のお信です。
当時のお信は、十代半ばの年頃と伝わり、八雲の身の回りを甲斐甲斐しく世話した存在として、聞き書きや回想にしばしば登場します。
お信は時々、目を細めるような仕草をしていました。このとき、左目の光を失っていたハーンは、お信を気にかけます。
ハーンは店の主人である太平に「お信を眼医者に連れていってほしい」と懇願。しかし聞き入れられることはありませんでした。
この前後、ハーンは自らお信に資金援助して医者の西川自省の元で治療を受けさせました。幸いにもお信の眼は完治したたと伝わります。
他者への労りを忘れない、というハーンの姿勢がここから見えるようですね。
しかしハーンは、太平に不信感を抱いていました。
太平の顔を見るのも嫌になったハーンは、そのうち「旅館を出て別のところで暮らす」と言い出します。
滞在から3ヶ月ほどで、ハーンは富田旅館を退去。織原の貸家(俗に京店(きょうだな)と呼ぶ)へ移転。最後に根岸邸へ移っていきました。
この間にも、ハーンは自分の食事を富田旅館に運ばせます。それを担当したのが、ツネやお信であったと記録には残ります。
ハーンは、暮らし向きのために自分の家に女中を派遣することを望んでいました。しかも士族出身という条件までつけて。
おそらくハーンは、教養豊かな階級の女中から日本のことを聞こうと考えていたのでしょう。
しかし一連の行動は、太平に不快感を抱かせます。何せ、旅館の業務と関係のないことに時間と手間を取られているのです。
そこでお信は、知り合いであった小泉セツに相談します。
お信は、かつてセツと同じ機織工場で働いていました。ここで面識を得ており、セツの養家と実家が困窮していることも知っていたようです。
やがて若女将のツネがセツを伴ってハーン宅を訪問。しかしハーンから返ってきたのは驚くべき言葉でした。
「腕が太い。士族の娘ではない」
驚いたツネは、この言葉に弁解。ハーンは頑なでしたが、やっとのことで理解されたと伝わります。
このシーンは「ばけばけ」でも実際に扱われていましたね(しかし「腕が太い」は女性に失礼です…)。
このことが契機となり、セツとハーンは同棲生活を送るようになります。
明治24(1891)年には、2人は結婚。ハーンはのちに小泉八雲と名乗り、世界に日本を喧伝していくこととなります。
