手洗いをしっかりしよう!Japaaan

『べらぼう』二人の固い絆が切れた──歌麿にとっての”招かれざる客”は愛する蔦重だった…【前編】

『べらぼう』二人の固い絆が切れた──歌麿にとっての”招かれざる客”は愛する蔦重だった…【前編】:2ページ目

歌麿にとって運命を変えた「招かれざる客」

蔦重にとってはチャンスでも、歌麿には「招かれざる客」でしかない、美人画の大量発注。

たしかに、蔦重にとっては大切なチャンスです。お上に身上半減の処罰を受けた後、本や絵が売れて少しは取り戻せたものの、まだまだ店の懐事情は厳しく、もっと大ヒット作品を売る必要がありました。

そこで、店頭で、歌麿の絵を購入してくれたお客にサインをする歌麿の肩を抱き、「これから、もっと江戸中の美人画を描いてもらう!」と店頭でアピールします。

「え?そうなの?」と、顔をしかめる歌麿。肩を抱かれてちょっと避けるそぶりも。蔦重への複雑な気持ちも、急逝した“おっかさん”こと、つよ(高岡早紀)に胸に秘めた気持ちを語り、「あんたも私の息子だよ」といってもらい、“蔦重とは本当に兄と弟になれた”……と、心が落ち着いたかと思えたのですが。

そのつよが亡くなり、心が揺れるようになったのかもしれません。

「聞いていないよ!」と言いたそうな、複雑な表情でしたね。SNSでは「歌麿の好意を利用して金儲けだけに走った」「そういうところだよ!蔦重」……と非難する声もみかけました。

蔦重は、たしかに、耕書堂を建て直すために儲かる作品が欲しいことには間違いありません。けれども、唐丸時代からの約束「俺がお前を当代一の絵師にする」も、叶えようという気持ちも忘れていません。

「今、江戸で(商売人相手に)これだけの大量の絵を受ければ、歌麿の名は必ず当代一の絵師として広まる」と分かっているので、負担がかかるのは承知の上で依頼しています。

けれども、その気持ちは歌麿との間でかなりの温度差が……。

もちろん、歌麿にも絵師として成功したい欲もあったでしょう。けれど、本心は、つよに語ったように「蔦重と二人で仕事をして作品を残す」「二人で綺麗な(せみのような)抜け殻を残したい」ということ。この想いは、蔦重には分からないでしょう。

3ページ目 「もっと自分と向き合ってほしい」という願い

 

RELATED 関連する記事