『べらぼう』歌麿の欲からひらめいた!「男女」を超越し愛する蔦重の仕草で誕生したあの美人画【後編】:2ページ目
大好きな絵師には「描いて欲しい」と願うのが贔屓筋の“欲”
それに対し
「お前の絵が好きなやつはお前が描けなくなることは決して望まねえ。これは間違いなく言い切れる。贔屓筋ってなぁそういうもんだ。」
と説得する蔦重。
この時、肉筆画の襖絵を前に座る歌麿の後に控えて座っている・釜屋伊兵衛が、この言葉を聞きながら、何度も頷いていたのが印象的でしたね。伊兵衛も、歌麿に「描いてほしい」と心の底から思っているのが伝わる場面でした。
「お前が俺とこれをやりてえかやりたくねえか、それだけで決めてくれ。」
という言葉に押され、歌麿は江戸に戻って大首絵に取り掛かります。
さっそく家で美人画にとりかかる歌麿ですが、このプロセスが見どころでしたね。最初に描いたのはあまりにもリアルな、女性のしかめっつらやふくれっつらで、おもしろいけれどもリアリティがあり過ぎる絵。
「いや、もうちょっと、美人画っぽく」と蔦重のリテイクをくらい、徐々に表情のある美人画へと変わっていきます。
さらに「つい目をひかれて、じっと見つめてしまう絵とは?」と話をしている最中、歌麿は、ふと、蔦重が煙管に火をつける仕草に目を奪われてます。
煙管に火を付ける仕草というのは、男でも女でも、一瞬その一点に集中した表情になり小首を傾げる仕草になるので、艶っぽさや色っぽさ(人にもよりますが)を感じるもの。
それをあの「国宝」を演じた横浜流星さんが、流れるような美しい所作でやって見せるので、これは歌麿でなくても見惚れてしまうはず。
蔦重のその仕草を、じっと見つめているときの歌麿の表情が見どころでした。
がさつな滝沢瑣吉(曲亭馬琴/津田健次郎)が歌麿のことを「あれは男色だ」と言ってましたが、そんなに単純な想いではないでしょう。

