『べらぼう』蔦重、定信、京伝、歌麿…それぞれの“尽きせぬ欲”とは?その「欲」から始まる新展開【前編】:2ページ目
クリエーターの“欲”を刺激する江戸一番の本屋の“欲”
一方、起死回生を図る蔦重は、次なる新刊の執筆を依頼するため、鶴屋喜右衛門と京伝の家を訪ねます。
手鎖の刑で痛い目にあった京伝は仕事を断り、自分の代わりに滝沢瑣吉(曲亭馬琴/津田健次郎)を紹介。
瑣吉は、耕書堂の手代として働きつつも、戯作者として黄表紙の執筆をすることになります。もともと武士で非常に偉そうで上から目線で態度が横柄ですが、どこか抜けていて単純なところもある様子です。
さらに、そこへ絵師の勝川春章(前野朋哉)が、弟子の勝川春朗(葛飾北斎/くっきー!)を連れてきます。
ドラマ「べらぼう」の中でも、過去No.1のクセが強過ぎる二人。
己の“欲”に真っ直ぐな性格の二人はすぐに喧嘩になり、店の前で大乱闘……になるのですが、クセが強過ぎる二人のドタバタ劇の最中も、取り乱すことなく温かい笑顔で「おいおい大丈夫かい?」という感じで見守っている北尾重政(橋本淳)先生、相変わらずの安定感でした。
そういえば、以前重政先生は、かつて「多くの弟子を見てきたので、大概こいつはこういう画風になるな〜とわかるもんだが」として、「歌麿のことだけは読めない」と言ってましたね。この春朗のことも「先の読めねえやつ」と言ってました。その通り、春朗はのちに葛飾北斎となって大活躍するのですが。
蔦重は瑣吉に山東京伝の名で作品を書くことを依頼。売れっ子の名前を使って自分の作品を出すなんて、プライドが高そうな瑣吉がよく承知したな……と思うのですが、そこは策士・蔦重。
「京伝の名前で書いて売れて追い抜いちまおう」とそそのかし、瑣吉はまんまと面白がり「やってみよう!」という気になったのでした。瑣吉、実に自分の“欲”にストレートなタイプのよう。
蔦重の、ピンチになっても「今まで知恵とひらめきで乗り切ってきた自分自身に負けたくない」という、江戸一番の本屋としての“欲”と相性がいいように感じました。

