【べらぼう】蔦重が定信へ挑んだ次なる一手…山東京伝(北尾政演)の黄表紙『奇事中洲話』に込められた思い:3ページ目
雉も鳴かずば『奇事中洲話』
……とまぁ、こんなお話し。
わかりやすくする関係上、かなりざっくり削っているのはご容赦ください。
本作は近松門左衛門の人形浄瑠璃「冥途の飛脚」をベースに、土山宗次郎(つちやま そうじろう)の公金横領事件を絡めた筋書きです。
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また中洲とは田沼時代に開拓された歓楽街で、松平定信が風紀粛正のため、寛政元年(1789年)にこれを破壊してしまいました。
蔦重はこれに反発して『奇事中洲話』を出版したと言います。
まったくおかしなこと(理不尽な弾圧)が中洲で起きた。雉も鳴かずば撃たれまい。定信も、余計な規制をしなければ、批判されることもあるまいに……そんな思いで名づけたのかも知れません。
しかし定信はこれを絶版処分に。定信にして見れば「雉も鳴かずば撃たれまい……余計な風刺などするから、返り討ちにされて世話がないな!」とでも思ったでしょうか。
あるいは撃たれることなど百も承知で、あえて鳴いて心意気を見せたとも考えられます。
終わりに
その後も蔦重らはお上の弾圧に抵抗を続けますが、いかんせん公権力が相手、分の悪さは否めませんでした。
果たしてNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、蔦重晩年の苦闘が、どのように描かれるのでしょうか。
心して見守り、応援していきたいですね!
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※参考文献:
- 小池正胤ら編『江戸の戯作絵本 2』ちくま学芸文庫、2024年2月



