【べらぼう】蔦重が定信へ挑んだ次なる一手…山東京伝(北尾政演)の黄表紙『奇事中洲話』に込められた思い:2ページ目
生霊同士の痴話喧嘩
花袖の生霊「あんた、私と言う女がありながら!」
忠兵衛の生霊「誤解だ!むしろお前の方こそ……」
傍から見ると高尾と八重蔵が喧嘩をしているようですが、忠兵衛と花袖の声をたよりに、やって来たのが八右衛門。
忠兵衛たちが江戸で暮らしているのが気に入らないと、わざわざ大坂から追ってきたのでした。
「この声は間違いなく忠兵衛でさ。お役人様、不届き者を引っ立てて下せぇ!」
果たして一気呵成に捕らえて見れば、そこにいるのは高尾と八重蔵。
化けてしまえば逃げられたはずなのに、生霊が絡みついていたので逃げられなかったのです。
「おかしいな、確かに忠兵衛の声だったはず……」
八右衛門らが困惑しているところへ、やって来たのが僧侶の道鉄(どうてつ)。
「この二人は先年亡くなった高尾太夫と荻野八重桐じゃ。忠兵衛らの生霊がついておるので、解放してやろう」
地獄の沙汰もカネ次第……ということで、道鉄は二人に路銀を与え、生霊から解放してやりました。
すると高尾と八重蔵の姿が消え、二人を縛っていた縄だけが地面に残されています。きっと成仏したのでしょう。
間もなく忠兵衛らが見つかり、取り調べの結果、忠兵衛の無実が判明しました。
晴れて赦免された忠兵衛と花袖は両国の柳橋で料理茶屋を開き、末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。

