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「べらぼう」胸に息づく平賀源内のあの言葉!怒りで暴徒と化す ”新之助の義” に粋に訴えた ”蔦重の義”【後編】

「べらぼう」胸に息づく平賀源内のあの言葉!怒りで暴徒と化す ”新之助の義” に粋に訴えた ”蔦重の義”【後編】:2ページ目

声高に叫ぶだけではなく主義主張を明確にする

打ち壊し用の武器を集めている新之助たちの長屋に、蔦重が再び訪問します。「やあ〜皆さん!」と臆さずに近づいてくる蔦重のメンタルの強さはさすがですね。新之助も蔦重とは袂を分かったと思っていたので驚いたでしょう。「何しにきやがった」と色めきだつ長屋の人々。

「てめ、奉行所に告げ口したんじゃねえだろうな」という人々の言葉も、まったく意に介さず「差し入れに来た」と風呂敷包みを開きます。中には布と筆と硯が。

新之助に、打ち壊しを止めに来たわけではない、「自らの思いによってのみ、我が心のままに生きる。わがままに生きることを自由に生きる……と源内先生も言ってたし」と、自分の思いを伝えます。やはり、血気盛んになっているとは言っても、源内の弟子であったことを思い出した新之助でしたね。

蔦重は持参した布に「親さんの思いを書いて“のぼり”を作ったほうが絶対に主張は伝わる」と提案し、「けれども、この布も高いので“俺の我儘も聞いて欲しいんでさ”」と言います。それは、誰一人、つかまらねえ、死んだりしねえことです。」と皆を見渡し「お願いします」と深々と頭を下げる蔦重。

またまた、軽率な長七が「きれいごというな!へへへ」と茶々を入れてバカにします。(こういうやついるよな、必ず。最後まで聞いて真意を学べよ、と思いつつ観てましたが)

蔦重は取り合わないどころか、「誰も傷つけない罪も犯さない打ち壊しにしよう。長七さん、いい打ち壊しだったねえ、と皆で飯食って笑い合おう」と軽妙な語り口で情感を込めて提案し、彼らを黙らせます。この“伝える力”はさすが名プロデューサーのエンタメ王という上手さでした。

この「蔦重の義」は新之助にも伝わりました。「カラッといきてぇじゃねぇですか、江戸の打ちこわしは」に「喧嘩だな。打ち壊しが喧嘩なら江戸の華で済む」と返します。

理性のないただの暴徒と化した打ち壊しでは、被害者や死人が出てしまう。けれども、主義主張を書いた“のぼり”を持って米屋に喧嘩を売るのであれば、喧嘩両成敗の江戸のこと、罪も軽くて済みます。「文字と言葉を使って訴える」この提案は新之助はもちろん、長屋の人々にも伝わりました。

自分に暴力を振るう長屋の連中にも深々と頭を下げるという成長ぶりを見せた蔦重。大店の主人らしい貫禄が身についてきましたが、若い頃の源内の言葉をしっかり胸に抱いている。プロデューサーとして痛快な仕事の進め方は数多く見てきましたが、今までの中で一番、「人間として」かっこよかったですよね。

そんな「蔦重の義」は、自分の身を慮って体を張ってやってくれていることとすぐに理解する新之助は、やはり「理」を持っていたとうれしく感じたシーンです。

「金を視ること勿れ。すべての民を見よ。世をたださんとして、我々うちこわすべし」

新之助が筆で書いたこの言葉こそ、真の「新之助の義」を表したもの。その本当の「義」を引き出した、体を張った「蔦重の義」を通したのも立派でした。

お互いに立場は違えども、やはり若い頃に源内先生に学んだことは残っていたのだと感じる場面でした。

3ページ目 クセの強い癇癪小僧の松平が今後どう影響するのか

 

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