手洗いをしっかりしよう!Japaaan

大河『べらぼう』誰袖に戻った笑顔「筆より重いものは持たねえ」名プロデューサー・蔦重の見事な仇討【前編】

大河『べらぼう』誰袖に戻った笑顔「筆より重いものは持たねえ」名プロデューサー・蔦重の見事な仇討【前編】

「許してくだりんすかねえ、雲助様は。後すら追えぬ情けねえわっちを。」

NHK大河ドラマ「べらぼう」の第29話『江戸生蔦屋仇討』では、田沼意知(宮沢氷魚)刃傷事件以降、笑うことを忘れ、生きることすら放棄してしまっていた誰袖(福原遥)が、蔦重(横浜流星)が作った本でやっと笑顔を取り戻し、生きていくことを決心しました。

花見をする直前に、佐野政言(矢本悠馬)に斬られ亡くなってしまった意知。斬られた被害者なのに、「生活が苦しいのはすべて田沼が悪い」と思い込んだ江戸の人々が、煽動に乗り葬列に石を投げる。そんな状況の中、心が折れた誰袖は、自害を試みるもできず呪詛に走ってしまったのです。

そんな辛い前回から一転して、今回は「筆より重いものは持たねえ」と言い切った蔦重の見事な「仇討」の回に。

蔦重の名プロデューサーぶりが光った見事な「仇討」、その「仇討」に参加したクリエーターたちの苦労、笑顔が戻った誰袖などを、【前編】、【後編】の2回にわたり振り返ってみました。

【後編】の記事↓

『べらぼう』憔悴の誰袖に笑顔が戻るも…今後訪れるさらなる悲運は史実を基にどう描かれる?【後編】

刀を持たない町人である蔦屋重三郎(横浜流星)が考えた、田沼意知刃傷事件の「敵討」の方法は、お江戸のメディア王として、身分に関係なく誰もが読める「出版」で大ヒット本を生み出すこと。そして、意知(…

江戸のメディア王が陰謀匂う「佐野大明神ムード」を消す

「俺らの生活が苦しいのは田沼のせい!田沼を斬ったのは我らが佐野大明神!」という世論を煽っているのが同じ人物であることに気がついた蔦重。これらの裏には、黒幕がいると確信しました。

駆け落ちして地方に逃げた新之助(井之脇海)、うつせみ(おふく/小野花梨)夫婦から“生活が困窮し、人々が田沼を憎み、佐野を神様のように崇める”のも致し方ないという心情を聞いたものの、「斬られたほうが悪者にされる風潮にはついていけえね」と言います。

蔦重の敵討の相手は、切腹してこの世にいなくなった佐野だけではなく、そんな風潮を作り出した黒幕と、やすやすと陰謀論に乗っかり意知を悪者にする江戸の町の人々だったのでしょう。

蔦重ができる「敵討」の手段は、身分に関係なく誰でもが読める「出版」の力で本を出すこと。江戸のメディア王として、自分ができるのは「佐野大明神」と崇める風潮を消すだと決意したのです。

蔦重が「これならあいつ(誰袖)を笑わせられるかも」とアイデアを思いついたのが北尾政演(山東京伝/古川雄大)が持ち込んだ手拭いの柄でした。

「この手ぬぐいの男を使ってね、腹がよじれるような黄表紙を作りてえんです。」と、北尾政演、恋川春町(岡山天音)、朋誠堂喜三二(尾美としのり)などクリエーターたちを集め、そこに鶴屋喜右衛門(風間俊介)も参加して皆で案を練ります。

この手拭いの男を「二代目金々先生」ということにしようということになり、「これは難しそうだ」ととまどいをみせる北尾政演もついに引き受けることになりました。

2ページ目 作品に心血注ぐクリエーターVS非情な編集者

 

RELATED 関連する記事