
【大河べらぼう】シュールすぎる蕎麦とうどんの戦い!恋川春町『うどんそば化物大江山』とはどんな作品?
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」皆さんも楽しんでいますか?
断筆事件を乗り越え、狂歌師・酒上不埒と生まれ変わった恋川春町(岡山天音)。
これまで戯作者として『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』や『辞闘戦新根(ことばだたかいあたらしいのね)』『無益委記(むだいき)』など、多くの戯作を世に送り出して来ましたが、こちらの作品もなかなかシュールに楽しめます。
名づけて『うどんそば化物大江山(~ばけものおおえやま)』。安永5年(1776年)出版、板元は鱗形屋孫兵衛。果たしてどんな物語なのでしょうか。
立ち上がった蕎麦粉と薬味四天王
時は蕎麦掻院(そばがきいん)の御代。花のお江戸に夜な夜な現れて、往来の者から銭を奪う変化(へんげ。化物や妖怪)がおりました。
「どうやら夜の街に粗悪な麺類を売りつけて、荒稼ぎしている悪質業者がいるらしい……」
これを憂えた源蕎麦粉(みなもとの そばこ)は、さっそく四天王を召し出して対策を協議します。
召し出された四天王とは以下の通り。
- 渡辺陳皮(わたなべの ちんぴ)
- 碓井大根(うすいの だいこん)
- 卜部鰹節(うらべの かつおぶし)
- 坂田唐辛子(さかたの とうがらし)
……タイトルの「大江山」でもお察しの通り、源蕎麦粉とは源頼光(よりみつ/らいこう)であり、召し出された四天王も世に言う頼光四天王がモデルです。
- 渡辺綱(つな)
- 碓井貞光(さだみつ)
- 卜部季武(すえたけ)
- 坂田金時(きんとき)
陳皮・大根・唐辛子・鰹節は蕎麦の薬味。彼らなくして、蕎麦は美味しく食べられません。
陳皮とは蜜柑の皮をすりおろしたもので、爽やかな香りが特徴です。
醤油が普及する前は、蕎麦つゆに大根のおろし汁などが使われていました。
鰹節は蕎麦つゆの出汁に重宝するし、そのまま振りかけても味わいを楽しめます。
そして唐辛子は蕎麦つゆに欠かせない辛味と言えるでしょう。
源蕎麦粉は「らいこう」⇒「そばこう」⇒「そばこ」と変化したのかも知れませんが、残り四天王たちは名前の原型がありませんね。
話を戻して、主君から事情を聞いた四天王のうち、渡辺陳皮が進み出て「それがしが退治いたしましょう」と申し出ました。
その心意気やよしと源蕎麦粉は自身の愛刀(来金道の蕎麦切包丁)を与えて出発させます。