『べらぼう』そうきたか!が蔦重の真骨頂――老舗に敗れて見えた”才能の正体”によって開ける未来を考察【前編】:3ページ目
違うジャンルの作り手に別の仕事を“指図”する
蔦重が“指図”の大切さを感じたのは、もうひとつ。
蔦重が抱えていた人気絵師・北尾政演(きたおまさのぶ/古川雄大)が、ちゃっかり鶴屋の「本気で戯作をやってみませんか?」の誘いに乗っかったことです。
実際に書いてみたら「ここは◯◯したほうがいい。ここはいらない」など、鶴屋から細かく“指図”をされ、気が付いたら「書けちゃってた!」ということでした。
実際、北尾政演が書いた本は大ヒット。「戯作が書けるなら、ひとこと言ってくださいよ」と、蔦重がぼやくのも無理はないですよね。なかなかに、お調子者のところがある政演なのでした。
けれども、これに関しては、政演自身はやろうとは思っていなかったのに、絵で評判の政演に戯作を書かせるという挑戦をさせた鶴屋のほうが、一枚上手だったのだと思います。
敏腕編集者としての能力が高い鶴屋のこと。細かくあれこれと“指図”をすれば「こいつは書ける」と見込んだのか。
はたまた、政演なら素直に言うことを聞いて書いてくれるだろうと思ったのか。
すでに絵で人気の北尾政演が書いた本ともなれば、話題性もあり売れると見込んだのか……たぶん、全部が理由のような気がします。
