朝ドラ「あんぱん」山寺宏一演じる座間晴斗にはモデルが!やなせたかしの恩師・杉山豊桔の生涯とは?:2ページ目
朝鮮・北支工芸研究と出版活動
豊桔自身は、教育の枠を越え、杉山は工芸意匠の研究者としても精力的でした。
昭和10(1935)年頃には『朝鮮 工芸及文様』と題する未刊研究原稿をまとめ、李朝青磁や刺繍文様を分析しています 。
さらに昭和14(1939)年には『輸出資料としての北支工芸』を上梓。中国北部の民芸を欧米向け商品開発に活かす視点を示しました 。
豊桔の姿勢は、民藝運動が国内伝統を見直す動きとは対照的に、輸出工芸の国際競争を意識した先端的プロジェクトでした。
デザイン普及にも尽力し、『アサヒグラフ』連載を再構成した写真図版集『今日の住宅』(朝日新聞社、昭和10年)では吉田鉄郎・堀口捨己らと並び編集に参加。合理的で健康的な住空間をビジュアルで提案しています 。
やなせたかしを育んだ“恩師”像
やなせは回顧録で「人生の基本を教えてくれた先生」と杉山を評します。
入学直後の励ましの言葉、銀座見学、そして“図案科の歌”――すべてが〈自分らしさ〉を肯定するメッセージでした 。
この影響は、やなせが戦後『アンパンマン』に込めた“正義とは愛”というテーマや、職業漫画家への転身といった自由な軌跡に色濃く反映されます。ドラマ『あんぱん』で山寺宏一さんが演じる座間晴斗も、生徒を伴って街へ出向き、芸術より生き方を教える姿が描かれています 。

