大河「べらぼう」蔦重と鱗形屋、最後の共闘!新章で大きく動き出した様々な”夢”を史実とともに考察【前編】:3ページ目
恋川春町を落とす!「100年後の江戸」という“夢”が誕生
廃業の支度をしていた鱗形屋は、書物問屋・須原屋市兵衛(里見浩太朗)から蔦重が内緒で自分の作った本を大量購入していたことを知ります。
須原屋の言葉で、蔦重に謝罪して恩返しをすることを決めた鱗の旦那。「おめえさん、鶴屋から春町先生をかっさらってくんねえか?」と、恋川春町を「その気にさせよう」と協力を申し出る手紙を渡します。
義理堅い春町は、妓楼での接待などもってのほか。
鱗の旦那は蔦重に、「春町先生は“誰もやってねえ”ことをやりたがるお人なのよ。俺への義理立てをかなぐり捨てさせるのは、これは誰かに譲りたくねえって思える“案思”を持ってくしかねえと思うのよ」と知恵を授けます。
義理堅くて真面目な春町に「書いてみたい」と思わせる、とびきりの案思(あんじ/作品の構想)を提案しようと、「チーム蔦重」が耕書堂に集まります。
蔦重は、鱗形屋にも「案思」を考えて欲しいと依頼。
商売を辞めることになって、精神的にも弱り床にふせっていた鱗の旦那でしたが「寝てる場合じゃない!」と起き上がり、机に向かって筆を走らせる場面では、元気を取り戻しキラキラと輝いていましたね。
「ああ、鱗形屋っていう人は、本当に“本”が好きで愛しているんだよな」と改めて再認識させられる場面でした。
そして、蔦重や朋誠堂 喜三二、北尾政演(山東京伝/古川雄大)、歌麿、りつ(安達祐実)、きく(かたせ梨乃)ら、クリエーターと人の表裏を見続けてきた女将たちが集まり、連日連夜アイデアを出しあうブレーンストーミングが始まりました。
自由にいろいろな案思を思いつくままに話、帳面に書きつける「チーム蔦重」。けれど、多数出版されていた青本は、さまざまなネタが出尽くしていて、どれもこれも誰かがすでに出版しています。
今なら、ネットで検索したりChatGPTに書かせたりするところでしょう。けれども、この時代は当然ながら、そういう便利なアイテムはありません。
仲間が寄り集まって、ああでもないこうでもないと「本人の頭の中に浮かんだストーリー」をいろいろ出すこのブレーンストーミングは、手探りのまさに「手作業」。
けれども、皆が「耕書堂の本がもっと売れるよう恋川春町先生を落とす面白いアイデアを」いう共通の“夢”を抱いています。立場は違うけれども「耕書堂をもっと盛り上げていきたい!」という想いが一致しているので、とても楽しそうでした。
現代のようにネットやAIによる企画を持ち寄るのではなく、自由に思いつくまま自分の発想を喋る。「こんな企画会議をやってみたい!」と思ったのは、たぶん、筆者だけではないでしょう。
そして、歌麿の「絵から始まる話があってもいいじゃないか」のひとことで蔦重が思いついた「案思」が「100年後の髷ってどうなってるんでしょう」「100年後の江戸が見てみてえ」。
「それだあああああ!!!」全員が声をあげます。
大河「べらぼう」に登場!恋川春町が江戸の未来を予想した「無益委記」実際の内容を全ページ紹介!
耕書堂に有力な戦力となる、恋川春町を口説き落とすパワー案思。「100年後の江戸」という“夢”が誕生した瞬間でした。
【後編】では、前回から参戦することになった歌麿を含むチーム蔦重の“夢”のスタート、鱗形屋が蔦重にバトンを渡した“夢”、またひとつ形になった瀬川の“夢”……などに続きます。
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