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カリスマか逆賊か?気弱な貴公子か?令和の文芸作品にみられる将軍・足利尊氏の新しいイメージ

カリスマか逆賊か?気弱な貴公子か?令和の文芸作品にみられる将軍・足利尊氏の新しいイメージ:3ページ目

気弱な貴公子

ただ、これは別の見方をすれば八方美人で投げ出し屋とも取れます。戦場で事態が深刻になるとあっさり自害しようとして、周囲が何度も止めたりしたとか。

さらに命に対する執着が薄かったからか、政権を二人三脚で運営していた弟の直義や執事の高師直との関係がこじれると、あっさり2人を切り捨てています。

師直は直義に滅ぼされましたが、その後、直義は尊氏が毒殺したという説もあります。

こうした彼の人物像の矛盾点やわけの分からない言動は人気漫画『逃げ上手の若君』でも丹念に描かれていますね。

先述の『極楽征夷大将軍』で尊氏は「やる気なし使命感なし執着なし」と描かれていますが、史料からも、功名心や野心の薄い気弱な貴公子だったという実像が読み取れます。

そんな尊氏の名誉回復は、戦後の歴史研究もさることながら、作家の吉川英治が1950年代後半から発表した『私本太平記』の影響が大きかったといわれています。

尊氏の人物像を肯定的に捉えたこの作品は、NHKの大河ドラマ『太平記』となり、多くの視聴者を引きつけました。今後は『極楽征夷大将軍』によって、新たな尊氏像が広まるかも知れません。

参考資料:
中央公論新社『歴史と人物20-再発見!日本史最新研究が明かす「意外な真実」』宝島社(2024/10/7)
画像:photoAC,Wikipedia

 

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