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大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、白湯の意味…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【後編】

大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、白湯の意味…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【後編】:2ページ目

「亡八」呼ばわりされても崩れぬ意次だったが

蔦重は、須原屋市兵衛(里見浩太朗)、平秩東作(木村了)、杉田玄白(山中聡)とともに田沼の屋敷を訪れて源内を救出するように頼みます。

秩父で鉄の精製事業に取り組んでいた平秩東作、『解体新書』を執筆する際に協力を得ていた杉田玄白、大手本屋の商人でありながら、平賀源内や杉田玄白などが書いた“新しい本”を数多く出版する個性的で革新的な板元(出版人)である須原屋市兵衛。そして、出会ったときから何かと源内を頼り、背中を押してもらい、はっと気がつくようなアドバイスをもらっていた蔦重。

彼らは、「源内はすでに刀を売り払い腰に帯びていたのは竹光だった」「酒に酔った上での凶行といわれているものの、実は源内は酒が飲めない」ことを主張します。

さらに、以前、源内は「死を呼ぶ手袋」という本を執筆中だったと、原稿を見せます。けれど現場に残っていたのは一枚だけ。ほかは全部持ち去られており、殺された大工の久五郎と逃げた丈右衛門以外にも“他に犯人がいるのではないか”と主張します。

そこに源内は獄中で亡くなったという知らせが。「本当は源内に死んで欲しかったのではないか」と睨みつける蔦重を、はぐらかして去っていく意次。

蔦重はその背中に向かって「亡八」と罵ったのでした。亡八とは、ご存知のように、「八つの人としての『徳』(仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌)を忘れた人間」のこと。

べらぼうのドラマで「亡八」といえば、楼閣の主人たちを指します。「四民の外」と差別されている吉原者の蔦重が、武士の意次に向かってその言葉を投げつける……蔦重の震えるような心の底からの怒りを感じました。

「死を呼ぶ手袋」で真相究明のためバディを組む“七ツ星の龍““源内軒“

蔦重から預かった書きかけの源内の1枚の遺稿「死を呼ぶ手袋」の文章を読んだ意次。そこに書いてあったのは

「近頃お江戸に流れしは、死を呼ぶ手袋の噂。そこに目を付けたのは稀代の悪党。その噂を使い、あちらこちら人殺し。だが、その鬼畜の所業に気付いたる男が居た。

その名も“七ツ星の龍“。しかし悪党も大したもの、何とその龍こそを人殺しに仕立て上げる。危うしの七ツ星!。

そこに彼を助けるべく現れたのが古き友人、“源内軒“」

そんな内容でした。

“七ツ星の龍“は田沼氏の家紋と意次の幼名から付けられた

「死を呼ぶ手袋」の噂に乗じて殺人を繰り返す犯人に気が付いた“七ツ星の龍“……そう、田沼氏の家紋は七曜(しちよう)、そして田沼意次の幼名は龍助

そして、その犯人の正体を暴こうとする七ツ星の龍を逆に殺人犯の汚名を着せようとする黒幕。窮地に立たされた七ツ星の龍を助けるために立ち上がった、古い友人“源内軒“

ドラマの脚本ではありますが、本当にそうであって欲しいと願わざるおえない感動的な展開でした。

意次に対する恨み骨髄の気持ち・決別した寂しさ・「甘い煙草」で精神錯乱状態一歩手前の源内が創作した物語は、意次の暴露話ではなく、固いブロマンスの絆で結ばれた意次への深い愛と夢だったのです。

「俺の口に戸は立てられない」と暴言を吐いたのは、「俺の知っているあれこれや、徳川家基(奥智哉)毒殺事件の真相などを暴いてやる、言いふらしてやる」ということではなく、「大奥やら城の中で『毒殺したのは田沼だ』と噂されているが、そのデマを暴いて犯人を俺が突き止めてやる!」ということだったのでしょう。

真摯に国益を考えひたすら邁進した源内らしい話だと感じ入りました。

番外編でぜひ、“七ツ星の龍“と“源内軒“の二人が、“陰に潜んでいる悪”を引っ張り出し罰するという、痛快バディコンビのストーリーをやって欲しいと思いました。

3ページ目 白湯が与えたのは“死”なのか“温もり”なのか

 

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