
大河『べらぼう』身請け後にいったい何が!?四代目瀬川が自害した真相と彼女の人物像に迫る【前編】:3ページ目
『源氏物語』に基づく松葉屋の符牒
四代目瀬川は風雅にも嗜みがあり、当時の松葉屋では間夫(まぶ。間男)を「はゝきゞ(ははきぎ。帚木)」、遣手(やりて)を「かゞり火(かがりび。篝火)」と呼んでいました。
これらの符牒(隠語)はいずれも平安文学『源氏物語』から採られたものです。
- 帚木(ははきぎ):第2帖のタイトル。
主人公の光源氏が仲間たちと女性の品評を語り合いながら、昔の恋を思い出す場面。 - 篝火(かがりび):第26帖のタイトル。
光源氏が娘の玉鬘(たまかずら。実は血が繋がっていない)に言い寄り、彼女が困惑する場面。
それぞれ、何とも言えず意味深なネーミングですね。
いずれも四代目瀬川が呼び始めたそうですが、彼女の造詣とセンス、そして松葉屋のみんなが彼女に憧れる信望の厚さがうかがえますね。
次回【後編】に続きます。
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大河『べらぼう』身請け後にいったい何が!?四代目瀬川が自害した真相と彼女の人物像に迫る【後編】
前編のあらすじ縁起の悪い名跡として、永らく空位となっていた瀬川(せがわ)の名跡。その原因を作ってしまった四代目瀬川(江市屋瀬川)とはどんな女性で、どのような最期を遂げたのでしょうか。【前編…
※参考文献:
- 内藤耻叟ら標註『近古文芸温知叢書 第10編』国立国会図書館デジタルコレクション
- 三田村玄龍『鳶魚劇談』春陽堂、1925年9月
- 三田村鳶魚『江戸の人物 史実と芝居と』青蛙房、1956年3月