
戦争が終われば今度はインフレ!現代にも通じる急激な物価高に人々はどう立ち向かったか?【後編】:3ページ目
新十円券の悲劇
ところで、貨幣の発行は国家権力の行使の一つですから、政治の影響が直接反映されます。
このとき発行された新円紙幣は、聖徳太子が肖像となった百円券と国会議事堂が描かれた十円券でした。
しかし、せっかくの新十円券のデザイン全体が「米国」という漢字に見えたとか、天皇家を象徴する菊の花の絵が鎖で繋がれているように見えるとか、GHQのヘルメットに見える箇所があるとかいわれ、GHQの陰謀があるのではという悪評が立ちました。
確かにそういう目で見てみると、見えないこともありません。
また、新円紙幣の印刷が間に合わないため、回収した旧円紙幣に切手のような証紙を貼り、新円として流通させたりもしました。
このように、終戦直後はインフレによる混乱を収束させるために、今では考えられないような政策がたくさん採られていたのです。
参考資料:執筆・監修阿部泉『明日話したくなるお金の歴史』清水書院、2020年
画像:Wikipedia