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縄文時代、戦争は本当になかったのか?「弥生時代に貧富の差が生まれ戦争が起きた」という歴史観が揺らいでいる

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しかし、2002(平成14)年、奈良文化財研究所が高知県土佐市の居徳遺跡群で縄文時代晩期(2800年前~2500年前)の人骨15体(少なくとも9人分)を発見し、縄文時代の戦争が現実味を帯びてきたのです。

人骨はいずれも成人男女のもので、その中には骨製の矢じりが貫通し、解体された痕跡のある女性の太ももの骨をはじめ、金属製ののみ状のような刃物で何度も刺された傷がある上腕骨など、明らかに殺傷された痕跡のある骨が3点ありました。

また、縄文時代に戦争はなかったとする説の重要な根拠の1つは、縄文人は武器を持たなかったということですが、近年の研究によってこの根拠も揺らいできています。

どういうことかというと、縄文時代の晩期、関東地方で有茎鏃(有茎式石鏃)が急激に増えているのです。有茎鏃とは、矢の棒の先に差し込む突起のある矢じりのことです。

それまで関東地方では、突起のない無茎鏃(無茎式石鏃)が主に使われていましたが、縄文時代晩期になって有茎鏃がたくさん作られるようになったのです。

無茎鏃の原料は黒曜石であり、地元になかったため、長野から仕入れていました。それに対して有茎鏃の原料は頁岩などであり、地元産です。

黒曜石の仕入れをやめて地元産の頁岩などを原料にしたというのは、仕入れを待っていたのでは追いつかないほど大量の矢じりが必要になる状況が発生したということです。

そんな緊急の状況とは、戦争以外に考えられません。

まだ、縄文時代には戦争が頻発していたと断言できるほどの材料はありません。しかし少なくとも、貧富の差が発生した弥生時代以前は、争いのないユートピアのような世界だったという歴史観はかなり揺らいでいると言えるでしょう。

参考資料:
日本歴史楽会『あなたの歴史知識はもう古い! 変わる日本史』宝島社 (2014/8/20)
画像:photoAC,Wikipedia

 

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