大河『べらぼう』花魁・花の井は実在の人物!吉原屈指の名妓「五代目 瀬川」の数奇な人生【後編】:3ページ目
当時、それほど位が高くない遊女の場合は、約40両ほど(200万円相当)だったそうですが、検校が五代目瀬川の身請けに支払った金額は、なんと1400両(約1億四千万円相当)。
そこまでの大金になったのは、松葉屋に支払う瀬川の身請け金のほかに、残された年季の推定収入や送別の宴費用、妹分の遊女や奉公人などへの祝儀など、さまざまな経費が必要だったそうです。松葉屋はこれによって莫大な財をなすことになりました。
鳥山検校は莫大な私財を投げ打ってまでも、どうしても瀬川を独占したかったほど惚れ込んだのでしょうか。
この巨額な身請け金で五代目瀬川が落籍された話は話題に話題を呼び、戯作者・田螺 金魚(たにし きんぎょ)により戯作『契情買虎之巻』という悲恋話まで誕生しました。
吉原の遊女瀬川が、亡夫幸次郎によく似た五郷と恋仲になるが、周囲に邪魔され、ついには男児を残して死ぬという悲しいストーリーで、のちに元祖・人情本とされました。
その後、鳥山検校は取り立てが苛烈な悪徳高利貸し一派の親玉として、瀬川を身請けしてからわずか3年後、安永7年(1778年)に江戸幕府から財産を没収、江戸から追放されてしまいます。
瀬川は、鳥山検校のもとを離れて御家人の妻になった、大工の妻になったなどいろいろな説がありますが、江戸中が騒然となったほどの身請け話で有名な花魁なのに、行く末が定かではないというのも不思議な話です。
美貌と才能で吉原きっての名妓として名高かった花の井。
『べらぼう』のドラマでは、花の井は幼馴染の蔦重に想いを寄せているようにうかがえます。
NHKの公式サイトによると、鳥山検校は俳優の市原隼人さんが演じるのですが、多額のお金で花の井を身請けするもその心までは完全に自分のものにすることはできず、常に蔦重の姿を感じてしまう……という展開になるとか。
トップクラスの花魁でありながら、恩義のある河岸女郎の姉さん遊女を心配する心優しくきっぷのいい花の井花魁が幸せになるようにと願いつつ、どのような展開になっていくのか今後が楽しみです。