【光る君へ】惟規、ついに退場なのか…?まひろ(藤式部)の弟・藤原惟規の”らしさ”あふれる最期がコチラ:3ページ目
僧侶に呆れられる
……聞きて「其の野には、あらしにたぐふもみぢ、風になびく尾花がもとに、まつむしも鈴むしも鳴くにや。さたにもあらば、何かくるしからん」といふ。これを聞きて、あいなく、心づきなくておほえければ、此の僧にけ去りにけり。……
※『十訓抄詳解』上巻より
【意訳】僧侶の話を聞いた惟規は、つまらなそうに言う。
「あーあ、あの世にも嵐に舞い散る紅葉や、風になびく尾花(ススキ)があればいいのに。それと松虫や鈴虫の声も欲しいな。そんな風雅な場所なら、一度行ってみたいけどね」
いよいよ死にそうだと言うのに、この期に及んでジョークを飛ばす惟規。僧侶は呆れて席を立つ。
為時「ちょっと、息子を看取って下さいよ」
僧侶「息子さんのノリには付き合いきれません。私は帰ります。ごきげんよう、よい旅を」
為時「やれやれ、行ってしまわれた……惟規?」
惟規は先ほど詠んだ和歌をしたためながら、事切れていた。
最期の一文字「ふ」
……此の歌のはてのふ文字をば、えかゝざりけるを、さながら都へもて帰りてけり。おやとも、いかにあはれにかなしかりけん。
※『十訓抄詳解』上巻より
【意訳】為時「まったく、お前と言うヤツは最期の最期まで……」
見ると、惟規は途中で力尽きており、和歌の最後一文字が欠けている。
都にも恋ひしき人のあまたあれば、なほこの度はいかんとぞ思……
為時「旅先は 越後の国に 飽き足らず 中有(ちうう)の途(みち)に たぐふ紅葉(もみぢば)」
惟規の言っていた旅とは、越後国だけでなく、中有の紅葉や尾花も観にいくようだ。
こんな時までアイツらしい。ちゃんと帰って来るんだぞ……。
為時は涙ながらに、最後の一文字を書き足してやったのであった。
終わりに
今回は『十訓抄』が伝える藤原惟規の最期を紹介しました。
あの世にまで風雅を求めてやまない姿は、生来のジョーク好きなのか、あるいは父たちを悲しませない健気さだったのかも知れませんね。
果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、どんな最期が描かれるのか、高杉真宙の終演に注目です!
NHK大河ドラマ「光る君へ」第39回「とだえぬ絆」は、10月13日(日)放送予定です。
※参考文献:
- 石橋尚宝『十訓抄詳解』国立国会図書館デジタルコレクション