昭和天皇が満州事変を止められなかったのは何故?天皇と軍の微妙な関係【前編】:2ページ目
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楽観的に見られていた満州事変
まず押さえておきたいのは、昭和天皇は基本的には満州事変には反対しており「不拡大」の方針だったことです。
その一方で、軍による侵略が進んでなし崩し的に満州占領が容認されていく中で、天皇の言動にもある種のぐらつきが生じていました。
まず満州事変は当初、満州鉄道の爆破に対する自衛行動という名目で起こされていることがポイントです。よって軍の中央部も政府も昭和天皇も、満州事変は短期間の治安出動で終わるだろうと楽観的に見ていました。
この楽観論が生じたのは、当時の奈良侍従長が状況について甘い見通しを報告していたためと言われています。よって昭和天皇も、この段階では特に行動を起こしていません。
しかし関東軍や一夕会は最初から満州全土、それどころか華北まで占領するつもりでした。満州事変に対する認識には、当事者と政府との間で大きなズレがあったのです。
【後編】では、その後の陸軍の動きに対して、天皇がどのように動いていったのかを見ていきましょう。
参考資料
井上寿一『教養としての昭和史集中講義』倉山満『 』KKベストセラーズ・2018
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