武田の騎馬軍団は存在しなかったってホント?戦場で馬に乗るメリット・デメリットを考察【どうする家康】:2ページ目
攻撃力は高まる一方、リスクや技術的ハードルも
まずは馬に乗って戦うことのメリット・デメリットを挙げてみましょう。
【馬に乗って戦うメリット】
- 高い位置から攻撃できる(力が入り、威力が増す)
- 突進力、突破力に優れる(もちろん逃げ足も速い)
- 敵を威圧できる(もちろん相手の胆力にもよる)
【馬に乗って戦うデメリット】
- 位置が高いため狙い撃ちされやすい(標的にされる)
- 馬が死ぬと経済的損失が大きい(気軽には代わりを買えない)
- 馬術(馬を制御しながら戦う)スキルが必須
ざっとこんなところでしょうか。メリットは攻撃力の増強、デメリットは討死や経済的なリスク、そして技術面のハードルと言えます。
果たして当時の武士たちは、これらのメリットとデメリットを天秤にかけて、戦う時は積極的に馬から下りる選択をしていたのでしょうか。
もちろん、技術的に無理な者(左手の手綱で馬を制御し、右手の武器で満足に戦えない者)は下りたでしょう。ぼんやり馬に乗っていたら、それこそ恰好の標的にされてしまいます。
ただし武士として戦場にいるからには、ただ生き延びる以上に戦って武功を求めねば話にならないのです。
位置が高いということはイコール目立つ、目立つからこそ武功をアピールできると考えるのが武士というもの。
命を張ってナンボ、それでメシを食っているのですから、目立つ=撃たれるなんて考えていたら商売になりません。
ひたすら生き延びるだけが目的なら、最初から戦場なんか出て来ないのが一番です。
でも戦って馬が死傷したら、簡単には買い換えられない(金額面はもちろん、物量面でも)じゃないか……そう思われるかも知れません。
ならば質問です。あなたが下りた馬は、どこに預けておきますか?
戦場に安全なパーキングなんかあるはずもなし、前線から離れた場所にただ馬をつないでおいたら、盗まれてしまう可能性が高そうです。
いやいや、誰か見張りを……そんな人員(特に戦力となる男性)がいるなら、さっさと前線に回して下さい(老人ならばさっさと殺され、女子供なら奴隷に売り飛ばされるのがオチでしょう)。
下手をすると、あなたのつないでおいた馬を敵が盗み、あなたに襲い掛かってくるという最悪シナリオだってあり得るのです。
その敵にしてみれば、あなたから盗んだ馬は棚ぼた(元々なかったもの)ですから、最悪乗りつぶすつもりで遠慮なく突っ込んでくるでしょう(状況にもよりますが、筆者なら間違いなくそうします……もし馬術の心得があれば)。
いざそうなった時、あなたは徒歩で騎馬の敵を相手に戦わねば……え、あなたの愛馬はご主人様を裏切るようなことはしない?
もしそこまでの絆が育まれているなら、あなたの馬術は相当の域に達しているはず。ならば尚更乗っていた方がよいかと愚考します。
高価な馬を死なせてしまう経済損失を心配する前に、まずは戦って勝ち、かつ自身が生き延びることを第一に考えるのがおすすめです。そのために必要な戦力を、わざわざ後方に温存しておくのはあまり得策とは言えません。
要するに「馬は確かに貴重だけど、それは自分の命と引き換えにしても守るべきですか?」という話です。