終わりに

落合芳幾「太平記英勇傳 長宗我部宮内少輔元親」

一　従本山永濱ノ城可取返ト其勢千騎討寄来ル長宗我部元親ノ勢三百塩堤ヘ出向防戦又元親勢屓ニ成散々敗軍ス此紛ニ敵元親ヲ目懸二人鑓ヲ以懸リケルヲ元親二人共ニ突伏ラレケリ然所ニ又脇ヨリ一人カカリケルヲ飛達太刀ニテ切給フ大将ノ勝気成働ヲ敗軍ノ士共是ヲ見テ取テ返し又一所ニ集り働ケル間本山ノ大勢元親の小勢ニ被懸立引退ケルヲ半路討追討ニ首七十餘討捕ケル去程ニ追諾ル所ハ本山領分湖江之城有ケルヲ元親此競ニ可乗捕トノタマイケルヲ老功ノ士申様ハ勝テ甲ノ緒ヲしムルトハ加様ノ時節也暫相待玉ヘト申ケルヲイヤトヨ見ニ有子細続ヤ者共ト真先ニ進し給ヒケル山城ヘ登リテ見ケレハ敵兵各一人■時ニ乗捕ル而後老功ノ士何思召此山城ヘ御懸リ給ト申ケレハ元親ノ仰ニハ本山敗軍ノ士此城ヱ不籠直ニ落行也又ハ従此城人数ヲ不出■不審也敵方ニ逆心ノ籠タルヘしト思慮ヲメリラレ取懸タリト仰ケレハ老功ノ諸士鑓ヲ地に置平伏しテ申ケルハアツハレ土佐国ハ不及申西国ノ主ト可成大将にて御器量自御生付候ト口々ニ感之奉挙所也

※『長元物語』より

かくして初陣を武勲で飾った長宗我部元親。これ以来、人々は元親を「姫若子」から「鬼若子（おにわご）」と呼ぶようになったと言います。

やがて初陣の翌月（永禄3・1560年6月）に父・国親が急死すると家督を継いだ元親。もはや誰も文句なしだったことでしょう。

ここから始まる元親の四国制覇、その後の展開はまた改めて紹介したいと思います。

※参考文献：

• 笠谷和比古 監修『武士道 サムライ精神の言葉』青春出版社、2008年8月
• 高知県立図書館（山内文庫）蔵『長元記』