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サントリー美術館で公開中!京都・智積院の国宝「桜楓図」に隠された悲劇を紹介

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久蔵の早世と「松林図屏風」

しかしこの桜図には悲しい話があります。

等伯の息子で桜図の作者である久蔵は、天才的な画技の高さから次代の長谷川派の棟梁として将来を嘱望されていたにも関わらず、この桜図を仕上げた直後にわずか26歳で早世してしまったのです。『本朝画史』では、「画の清雅さは父に勝り、長谷川派の中で及ぶ者なし。父の画法を守り(中略)、人物・禽獣・花草に長じる」と高く評価されていたのに……。

時に等伯55歳。息子の突然の死というショッキングな出来事に創作どころではなくなり、楓図の制作も一時止まりかけたものの、なんとか己を鼓舞し、力強い楓図を描き上げました。桜図の桜にも増して幹が太く、堂々とした風格の楓の大樹。悲しみを少しも感じさせない生命力に溢れる豪華な楓図は、見る者の心を震わせます。

展覧会「京都・智積院の名宝」 サントリー美術館

 

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